中編4
  • 表示切替
  • 使い方

雄虫・雌虫

 私が子供の頃に体験した「虫についての話」をしたいと思います。とは言っても、途中からは夢の中での体験談になりますが。

今から10年前…私が10歳・弟が7歳の時、両親に連れられて父方の祖父母の家に行きました。祖父が亡くなり、その遺体を埋葬するためです。父は養子でしたが、祖父の死をとても悲しんでいました。

 

祖父母の家は森の中深くにあり、家と言うよりは小屋と言ったほうがしっくり来る様な見た目でした。弟が祖父母の家周辺を見回して、カブトムシが一杯取れそうだね~と呟いた事を覚えています。

祖父母の家の中に入ると、祖父の遺体がありました。私はその遺体を見ながら「お爺ちゃんを燃やすの?」と両親に尋ねました。すると両親は「お爺ちゃんの生前からの希望で、土葬する事になっているんだよ。」と言われ、お爺ちゃんを燃やさないんだ、良かった~。と感じました。燃やすのは可哀想だ、と何となく思っていたからです。

さて、そうこうしている内に日も暮れ、両親と葬儀屋の話も終わり、お爺ちゃんの遺体は明日の朝に埋葬する事になりました。自ずと、今日はお爺ちゃんの遺体と1晩明かす事になり、正直なところ怖かったです。私達家族は、祖父の遺体が安置してある隣の部屋で寝る事になったのですから。

しかし、悪い事ばかりではありませんでした。祖母が作ってくれた晩御飯がとても美味しかったのです。私は祖母の料理の腕前に感動しながら、ひたすら食べました。そんな私を見て、祖母が言いました。「お爺ちゃんもねぇ~私の作る料理が美味しいって言うてね~。特にサラダがお気に入りで、無農薬野菜に限る何て言うてはったんよ~。」そんな祖母の呟きなど気にせず、私は晩御飯をひたすら食べました。

私は調子に乗って晩御飯を食べ過ぎてしまい、満腹状態になりました。満腹になり、強烈な眠気が襲ってきたので、両親・弟・祖母より一足早く布団に入り、眠りにつきました。ここまでは現実の話で、これからが悪夢の始まりです。

私は尿意を催し、目を覚ましました。その時の時刻は午前2時頃だったと思います。しかしおかしいのです。両親と私と同じ部屋に寝ているはずの“弟”がいないのです。弟はどこに行ったのだろうと思いながらも、トイレに向かいました。

私は用を足し終え、部屋に戻りました。しかしやはり、両親は寝ていますが弟の姿がありません。これはどういう事だ、と考えていると…隣の部屋から声が聞こえました。そう、祖父の遺体がある部屋です。何かの聞き間違いだろう、と思っていると、今度は先程よりもはっきりと声が聞こえました。…弟の声が。両親を起こそうと揺さぶりましたが目を覚ましません。

私は、隣の部屋で一体何が起こっているんだ?と思い、襖を少し開き、覗き込んでみました。すると、そこには“弟を押さえつける祖母の姿”と“両目・鼻の穴・口・体中の毛穴から、何百もの蛆虫の様なものが飛び出ている祖父の姿”がありました。祖父の体から飛び出した蛆虫は、弟の方にゆっくりと這い、ズブズブと弟の毛穴から入っていきます。「…ぅ…うぅ…ぁ…」弟は白目をむきながら、体を痙攣させ、うめき声を上げています。

「キャー!!」私は、余りにも惨い光景に悲鳴を上げてしまいました。その瞬間、祖母がギロリと此方を睨みました。そして、此方にジリジリと迫ってきました。私は余りの怖さに、気を失ってしまいました。

「起きんしゃい。もう昼よ。」私は、祖母の声で目を覚ましました。「あんた、ずいぶんうなされとったねぇ、怖い夢でも見たとね?昨日、晩御飯食べ過ぎたっちゃなかと?」心配そうに私に話しかける祖母。え?弟が襲われてた光景…あれは夢だったの?夜中にトイレに行った事も夢だったのかしら?…私は周りを見回しました。そこにはいつもと変わらぬ両親の姿、そして、隣の布団で眠っている弟がいました。

「お前いつまで寝てるんだ。もうお爺ちゃん埋めちゃったぞ。」両親が私を叱る。…そうよ、あれは夢だったに違いないわ。お爺ちゃんを無事埋葬し、私達は自分の家に帰りました。

…夢とは言えども、気持ち悪い話…祖父の死から10年経ちますが、まだ忘れられません。

「晩御飯よ~!!あんたも来なさ~い!!」母の声に誘われ、私は食卓へ向かった。両親・私・弟…家族4人での食卓、なんて幸せなんだろう。私が悦に浸っていると、「この野菜美味しくない…無農薬野菜がいい…」と弟が呟きました。10年前位から、弟が野菜にうるさくなったのです。

「ご馳走様でした」私は晩御飯を食べ終わり、自分の部屋に戻ろうとしました。その時です。父が「…今日、俺の母、つまりお前達のお婆ちゃんが死んでな…葬儀のために、明日は祖父母の家に行くぞ。」と言ったのです。

「ニタァ~~~」お婆ちゃんが死んだ事を父の口から聞いた瞬間、弟の顔が不気味に微笑みました。そして私に向かってこう呟いたのです。「明日から、婆さんの作る飯が食える…楽しみじゃ」と…。

―後日―

アナウンサー「一家4人失踪事件…内、両親2人は遺体で発見されました。が、長女・長男はまだ見つかっておらず、捜索中です。しかし、警察の考えでは子供2人の生存も絶望的との見解を示しており…」

雄虫「若い体は最高だな」

雌虫「本当。あと60年は持つわね。」

雄虫「次の“乗り換え”は60年後…養子を取るのはもう少し先だな。」

雌虫「ええ。それまでは、2人でひっそり暮らしましょう。」

若い体を手に入れた雄虫と雌虫は、森深くへ消えていった。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
3121
1
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

良作。
怖い押しときますね。