短編2
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実体のない 3

大人達が入ってきた。「おめでとう。君達だけが最終試験に残った」

どうやら運良く生き延びられた。

それから俺達は毎日のようにアイマスクを着けさせられ、いつも決まって真夜中にあらゆる場所へ連れて行かれては帰ってくる。

帰りの車内では決まって必ず頭痛や嘔吐に襲われ、薬を飲んでは眠り、目が覚めると部屋にいる状態を繰り返していた。他の4人とは別行動だったので俺と同じような症状かはわからなかった。

ここに来てどれだけの月日が流れたか、考えることも感覚すらなかったある日、いつものように出かけた。

着いたのは海辺で、そこにある洞穴へ行ってくること。

真っ暗な洞穴を一番奥の行き止まりまで進んで、戻ろうと振り返ったときだった。

俺は右腕を誰かに掴まれた。

腕が握りつぶされるかと思う程の力で。激痛を伴い、体中が痺れて俺の悲鳴が洞穴にこだました。

今までに無い経験だった。

俺の中に想像を絶する怨念が、まるで大きな塊となって私の背中から体内へ入ってくる。

激痛に耐えきれず俺は気を失った。

気がつくと真っ暗闇の中に、恨めしそうな青白い顔した女や顔が半分焼けただれた般若の形相をした男の顔。腐乱して男女の見分けがつかない眼球が飛びだした顔が複数で俺を凝視している。

どうやら体は動かせない。

すると彼等の凄まじい念や感情が津波のように一気に押し寄せてきた。

今まで洗脳の支配によって封印された感情が刺激された。

気がつけば俺は、錯乱したように悲しみや怒りの感情で涙と鼻水が溢れていた。感情が落ち着くと、再び彼等の顔が見えた。

だが今度は悲しい表情をしている。

俺に何かを言ってるようだが声を聞くことができなかった。彼等の姿が消えた。右腕がヒリヒリする。

見ると腕を掴んだ手形の跡がミミズ腫れのように浮き出ていた。

俺はいつものように監視者である大人の元へ戻る。

帰りの車内でいつもの頭痛や嘔吐がしない。

しかしいつものことだと薬を渡された。俺は飲んだふりをして横になった。

到着すると監視者は俺が眠っていると思い、アイマスクを外すと体を抱えて建物へ歩きだす。

薄目にして様子を観察した。

いつも目隠しされてわからなかったものが、眠らされて知らなかったものをようやく見るチャンスがきた。

入った部屋には全ての監視者と俺達5人が揃った。

俺以外の4人の子供達も眠らされていた。

部屋には沢山の大きな壺が並んでいる。監視者が壺の前に子供を1人運ぶと蓋を開けた。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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