中編3
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ある男の予言

 ある日の夜、私は夢を見た。機械の前に座っている一人の男が、悩んでいる夢である。その男は40代後半位の中年だろうか。壁にはH29.04.04と書かれた紙が貼ってある。私はその男を観察する事にした。

 

 男は一人でぶつぶつと何か呟いている。私は耳を澄まし、男の言葉を注意深く聞いてみた。「遂に成功した。世界中の核ミサイル発射装置のハッキングに…。」男はそう言った。核ミサイル?ハッキング?何だそれは…私は男の観察を続けた。

 男は機械の前でじっと座っている。もう6時間も座りっぱなしだ。一体何を迷っているのか。男の指はYと書かれたボタンの上に置かれている。どうやら男はYボタンを押そうかどうかで迷っているようだった。機械の画面にはYesとNoが表示されていた。

 さらに1時間が過ぎた時、男が首を横に振った。そして指をYからNに動かし、ボタンを押した。この男は何がしたいのだ?男はそのまま眠りに着いた。

 3時間後、男は目を覚ました。そして、再び機械の前に座った。機械を操作し、先程と同じ様に、画面上にYesとNoが表示された。男の指も、先程と同じ様にYボタンの上に置かれた。「こんな世界…Yを押せば核ミサイルが世界中に…。」男はそう呟いた。

 1時間経った…男は固まったままだ。いっその事、男の変わりに私がYボタンを押してやりたい…そう思った時である。空からあるものが男を襲った。

 “ゴキブリ”である。男はドタドタと慌てふためく。キョロキョロと辺りを見回した男は、近くに置いてあった本をおもむろに丸めると、ゴキブリを威嚇した。

「あ~ん?」男はそう声を上げながら、ゴキブリに近づいていく。そして…「ゴルァ!!」と叫びながら、丸めた本でゴキブリを叩いた!!しかし!!ゴキブリは素早くその攻撃をかわし、逃げ回る。「more!!(もう一発!!)」男はそう叫び、もう一撃ゴキブリにおみまいした。

 グチャ…という音と共にゴキブリは息絶えた。男は勝利の笑みを浮かべる。満面の笑みだ。男は箱から白い紙を取り出し、その紙でゴキブリの死骸を拾い上げた。

ゴキブリの死体を拾い上げると、その下にはYの文字があった。男の顔が青ざめた。ゴキブリを潰した位置をよく見ると、Yボタンの上だったのだ。機械の画面には“実行しました”と表示してある。

 「やってしまったぁー!!」男が頭を抱え嘆いている。ゴキブリの騒動から間も無く、世界はとてつもない閃光に包まれた。全て燃え尽き、吹き飛び、それはまさに地獄…世界の終焉であった。

世界が終わった…そこで私は眠りから目覚めた。あの夢は何だったのか。いや、私には分かっている。あれは予知夢に違いない。早速皆に知らせなくては。

皆に知らせなければいけないが…待て、これは困った。あの夢の年代が分からない。それに、男が使っていた機械、核ミサイルとか言うもの…あれらも何か分からない。どうしたものか。あの夢で私が分かるのは、ゴキブリが空から降りてきて、世界が崩壊したって事くらいだ。

年代は適当にするしかない。あんな高性能な機械があるんだから…1900年代後半にでもしとこう。

「1900年後半、ゴキブリが空から降りてきて、世界が崩壊するだろう」…何か胡散臭いな。ゴキブリが空から降りてきて、世界が崩壊する…こんな予言、誰が信じるだろうか?“ゴキブリ”…これがダメなんだ!!もっと凄みのある名前にしよう。私は凄みのある名前を考えた。その時ふと、私の頭にゴキブリと男の死闘の様子が浮かんできた。

男は「あ~ん?」と言いながらゴキブリに近づき、「ゴルァ!!」と叫んだ後「more!!」と言いながらトドメをさした。あ~ん…ゴルァ…more…。あん…ごる…もあ…?アンゴルモア!!よし!!ゴキブリの名前はアンゴルモアにしよう!!

怖い話投稿:ホラーテラー 最愛さん  

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