短編2
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雄虫・雌虫 其の二

 私は幸せ真っ只中です。1年前に夫と結婚し、1歳の子供もいます。そんな私は今、夫と車でドライブしています。真昼間に雄大な森の中をドライブ…なんて気持ちいのでしょう。後部座席に座っている1歳の娘と息子も、無邪気に笑いながら外の景色を眺めています。

 運転席と助手席…夫婦で何気ない会話を交わしながら、森の中を走ります。その時です!!走っている私達の車の前を、2つの影が横切りました!!

 夫は慌ててハンドルを切ります。タイヤがキュルキュルと音を発しながらスリップし、私達を乗せた車は森の谷底に転落してしまいました。

 「おい!!大丈夫か!?」夫の声で私は意識を取り戻しました。私は車内で気を失っていたのです。「道から大分外れてしまった様だ。携帯は圏外だし…」運転席に座っている夫がそう言ったのと同時に、私の頭に娘達の顔がよぎりました。

 「娘達は!?あの子達は無事なの!?」私が夫にそう問いかけると、夫はほら…と言いたげに後部座席を指さしました。その先には、傷一つ無い元気な娘達の姿がありました。私達の誰一人、怪我をしていない事は不幸中の幸いでした。

 私達は車内で話し合いました。森の中、正しい方向も分からず歩いていいものか…それとも、じっと救助を待つべきか。しばらく話した結果、車を降りて、とにかく歩いてみようという結論に達しました。

 夫が息子を、私が娘を抱き、森を進みます。しかし、一向に道らしきものは見つからず、人の気配もありません。やがて、辺りが暗くなってきました。

 これ以上暗くなったら、マズイ…そう思った時、遠くに1件の家を発見しました。やった!!私と夫はその家に向かって全力で走りました。

 コンコン…。家の扉を夫がノックします。しかし、誰も出てきません。「おかしいな…誰もいないのかな?」そう言いながら夫がドアノブを回すと、ギィ…と音をたて、扉が開きました。

 すみません…お邪魔しまーす…。夫がソロソロと家の中に入っていきました。そしてすぐ、夫の悲鳴が聞こえました。私が急いで駆けつけると、そこにはお爺さんとお婆さんの死体がありました。

 お爺さんとお婆さんの死体には、蛆虫のようなものが集っています。「…今日は此処に泊まろう。」夫がそう言ったので、私は大反対しました。死体がある家で寝るなんて…と。しかし、「俺も嫌さ…だけど、野宿よりはマシだろう?熊が娘達を襲ったらどうするんだよ。」夫にそう言われ、私は渋々此の家に泊まる事を了承しました。

 次の日、私達は無事森から救助されました。私、夫、娘、息子…あんな事故を起こし、森に迷ったのに、皆が無傷で生還出来たのは奇跡です。

そして奇跡がもう一つ。何と、1歳の娘達が野菜を食べるようになったのです。きっとこの子達は、人一倍健康で、長生きする体に育つ事でしょう。

怖い話投稿:ホラーテラー 最愛さん  

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