短編2
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MD

私は今日も仕事を終え、また灯りのついていない我が家へと帰って来た。だれも待っていてくれる者などいやしない我が家に・・・・・・

妻には2年前に交通事故で先立たれ、7歳だった一人息子も先月内臓の病気で奪われた。

私は玄関のドアを開け「ただいま」と、言いながら玄関に置いてあったMDプレーヤーの再生ボタンを押した。

『お帰りなさいパパ。愛しているよ』

愛していた息子の声。息子が、病院へ入院した最初の日に私が寂しくて泣かないようにと、看護師さんに頼んで吹き込んでいてくれた声。

「ただいま俊。パパも愛しているよ」

私はそう言うとMDを切り、もう一度再生。

『お帰りなさいパパ。愛しているよ』

そしてまたMDを切り再生。

泣きながら、

それを何度も繰り返していた。

はっ、と我に返りこんなんじゃ息子に泣き虫と笑われるなと反省しつつ涙を拭いてMDを切ろうとする。すると、

『うあぁ、お腹が痛いよぉ・・・・・・』

俊の声!?私の知らない息子の声がまだ録音されていた!?

『パパのバカ、どうして一緒にいてくれないんだよ。さみしいよパパ・・・・・・』

後悔の感情と共に涙がまたあふれ出てくる・・・・・・

「俊、ごめんな、治してやれなくて、お前の本当の声に気付いてあげられなくて、ごめんな」

するとその時、

「そんなの大丈夫だよ、パパ」

「!?」

声は目の前のMDからではなく背後から聞こえてきた。そして背後から私の首に巻き付く小さな両腕。すぐに息子の腕だと分かった・・・・・・

怖い話投稿:ホラーテラー 行方不明さん  

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