短編2
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山口君についての思い出

今から20年近く前の小学校高学年の頃、

同じクラスに山口君という子が居て

たまに一緒に遊んでいました。

山口君の家は、幼稚園の頃に両親が離婚してしまい

その後は父親と山口君の二人だけで暮らしていました。

実は山口君のお父さんは、いつ家に遊びに行っても

見るからに酔っ払って赤ら顔でいて

友人の自分にも怒鳴りつける怖い人でした。

山口君が言う事には、前から酒飲みだったけど

離婚した後は、更に酒の量が増えてきたそうです。

気に入らない事があると、すぐ暴力を振るったり

長時間説教したりするので、山口君自身も

今のお父さんは嫌で、正直言って死んで欲しい

とまで言っていました。

そんなある日、少年ジャンプの発売日に

一緒に学校から帰る途中、このまま書店に行こう

という事になり、二人で書店に行きました。

二人でジャンプを開いて立ち読み始めてすぐ

山口君は「用事思い出した。ここで待ってて」と

立ち読みしている僕に言って、どこかに行きました。

20分ほどして「ごめん待たせた」と

山口君は息を切らして帰って来ました。

楽しみにしてたジャンプも読まずに、なぜか

「今日うちでファミコンやらねえ?」と

家に誘ってきました。

まぁここから歩いて5、6分くらいの場所だし、

この間やってた新作の対戦プレイがまたやりたいし

と思い、一緒に山口君の家に向かいました。

玄関に着いて、「ただいま!」

山口君は普段より妙に元気に言いながら開け

後に続いて自分も「お邪魔します…」と

入っていきました。

すると、階段下の廊下端に誰かが倒れており

良く見ると、山口君のお父さんでした。

頭と口から血を流しており、息をしてないようです。

「大丈夫ですか!199番も!110番!」と

取り乱している自分の傍らで、山口君は

やけに面倒そうに「ああ、そうだね」と

変に冷静に言いながら電話を掛け始めました。

それからは救急車や警察の人、近所の人などが

集まってきて、混乱そのものでした。

自分も色々聞かれましたが、とりあえず知ってる事

つまり帰って来たら既に倒れていた、

普段から酒飲みだったなどを説明しました。

後で聞いたのですが、どうやら

勢いよく階段から足を踏み外して転落したようで

首の骨も折れて死んでいたそうです。

山口君は、そのまま遠い親戚の家に引き取られ

学校も転校しました。

電話番号と住所は教えて貰ったので、その後も

何回か電話や年賀状をやり取りしてましたが

次第に疎遠になり、中学に入って少しした頃から

もう全く連絡を取らなくなりました。

でも、お父さんは本当に事故死だったのか

未だに疑問に思っています。

警察の人には、山口君と一緒に学校帰りに

本屋に寄ってそのまま一緒に君の家に行ったら…

とだけ説明しましたが…

怖い話投稿:ホラーテラー テールさん  

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