中編4
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湖畔の宿・1

あれは22歳の夏だった。

仲間内で旅行に行こう!と計画をたてた。

海と山のどっちにするかを決め、多数決の結果《山》に決定した。二泊三日で行く事になった。

行くメンバーはいつも美紀姉(仮名)の店に通うジモッティーの連中。(男・5人に女・美紀姉込7人)

プラス美紀姉の妹・香奈とその連れ2人。(ピチピチのJK)

計15人。ちょっとした団体さんになってしまった。

山と決まったが涼しい避暑地が良いと言う事で美紀姉の知り合いの宿に連絡をした。

行く日取りは約1ヶ月後の8月の終盤。急なうえ子供等が夏休みの最中とあって難しいと言われた。

しかし団体という事が功を奏し、(宴会場で良ければ…。)と言う限定付きで予約が取れた。

美紀姉曰く、

『大広間だから雑魚寝だよ!その変わり、一泊・五千五百円で良いって。あんた達、旅館行ったらお礼すんだよ!』

通常六千円で夏料金は七千円。その変わり雑魚寝に布団は畳んでもそのまんま。

食事も宴会場だけあってその場所で…。でも一泊二食付き!とってもリーズナブルである。

皆もあっけらかんとしていたが、安くなって喜んでいた。

出発の前日…。

なんと…大雨。

そのうえ…台風。

俺と茂(仮名)は仕事を終えた後、駅で待ち合わせて後輩が働いているレンタカー屋に向かった。

団体なのでマイクロバスを借りる為である。

大型免許を持っているのはこの2人だけ…。

しかし運転は茂がずっとすると言っていた。

何故かと言うとお店の女の子て好きな娘がいるので、『側に座らせてカッコつけさせろ!』と、うるさかったからだ。

内心、俺は(ラッキー!)と思い喜んでハンドルを譲った。

翌朝5時に美紀姉の家に集合なので男共は茂の家に泊まる事になっていた。

俺は一度帰り、荷物を持ってから茂の家に向かった。

…朝4時半、起床。

道路はまだ濡れているものの雲は離れて行き、眩しい朝日が差し込んで来た。

清・『洋さん(俺)絶好の旅行日和っすね!自分、久しぶりの旅行なんでソワソワしちゃいます。』

前回に登場した清(仮名)何年かぶりに休暇をもらったらしくいつも以上にテンションが高かった。

…朝5時、集合。

美紀姉の家には女共が大荷物を抱えて待っていた。

荷物を積み込む。

その時、すかさず俺は美紀姉に茂の話をして薫ちゃん(仮名)を助手席に座らせるように促してほしいと頼んだ。

『OK!任して…。』

美紀姉は地元の男共も一目置く人物であり恐れられている。

しかし面倒見が良く、悪口を言う者は一人として居ない。

因みに、元・レディースの総長である。

行くメンバーもバラエティーに飛んでおり、美紀姉達の23歳を先頭に香奈達の17歳が最年少である。

車の中は楽しい声がこだまするかのように弾んでいた。

小一時間経った頃には〇〇自動車道に入った。

遠くの空には台風一過を思わせる灰色の雲達が日の光に照らされて幻想的だった。

一斉に、『綺麗〜!』と騒いでいた。

途中でトイレタイムがあった程度だったので、10時前には料金所を出て一般道に降りていた。

キラキラ光る川沿いを行き、山道に入った途端に冷んやりした空気が車の中を駆け巡った。

これまた一斉に、『気持ち良いぃ〜!』と騒ぎ出し、誰しもが笑っていた。

チェックインは15時なんだが、荷物だけなら置いといて良いという事なので真っ直ぐ旅館に向かった。

山道を降りて行くとそこには緑と濃い青のコントラストが目の前に広がった。

湖の後ろには小高い山がそびえ立ち、ちいさな富士山を思わせる出立ちである。

湖畔を走り少し登った所に旅館はあった。

車を止めて荷物を降ろして広い玄関に行くと番頭さんと従業員の方々が出迎えてくれた。

『早く着きましたね…。さぁ、大広間にご案内致します。』

靴を脱ぎ、宴会場へと案内された。

奥に行き、5・6段ある階段を下って、雨に濡れない程度の渡りローカをぬけるとそこには、宴会場があった。

俺・『言わば、別館だな…。』

姉・『そう言った方が早いね…。』

ドア開けるとその思いとは裏腹で驚いてしまった。

石畳の広い玄関、障子を開けると直ぐ横には一段高くなったステージが有り、それを正面に大きく広がる畳部屋は大奥かと思わせるほど壮大な物だった。

さすがに皆は目をクリクリさせていた。

茂がステージの上にあがりカーテンを引いた、

そこには、

カラオケセットとタンバリンを始めとする小道具一式が揃っていた。

『番頭さん、これ使って良いんですか?』

茂が聞くと23時までなら自由に使って良いとの事。

夏休みは家族連れや少人数の旅行が多いので宴会場&カラオケはそんなに使わないと言われた。

荷物を置き、湖へと繰り出そうと再び車に戻んべと動き出した。

皆が部屋を出た後、茂が

『なぁ、なんか…感じた?』

そんな事を言ってきたので、『別に…。』と言うと焦ったかのように、

『いや、空気が外と違うかなぁと感じたから…ハハハハ。ちょっとだけ…。』

気になったのでしつこく突っ込むと、

『嫌な空気じゃない事は確かだから安心せぃ…!』

そう言われたのでそれ以上は触れなかった。

ローカをぬけるとそこに、

薫ちゃんがいた…。

『茂! 薫ちゃんお前を待ってたんじゃねぇ?』

茂の顔がニヤけた…。

薫ちゃんがスタスタっと小走りに来て一言、

『あの部屋…何か、感じませんでした…。』

茂と顔を見合わせ、息を同時に飲み込んだ瞬間だった…。

思ったより長くなりそうなので一旦ここで切ります。ちょっと明日も早いので…。

申し訳ございませんが、続きます。

怖い話投稿:ホラーテラー 元・悪ガキさん  

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