泣いてるのか?
そう思い俺は近寄らずにAを見守った
するとAは突然手に持っていたクワガタを俯いたままバリバリと喰いだした
俺「お前…なにを…」
俺がそう言うとAは顔を上げこちらを見た
俺「!!!」
俺を見るAの目は真っ赤で三倍ぐらい大きくなっていた
声も出せず立ち竦んでいるとAが奇妙な声で笑いだした
A「イヒャイヒャイヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
俺「うわぁぁぁぁ!」
俺は怖くなり全力で逃げたした
その後どこをどう走ったか覚えていないが俺は家に転がり込んだ
母「ちょっとあんたどうしたんね泥だらけで!」
母が俺に声をかけるが俺はうまく言葉が出せない
その声を聞き父が二階から降りてきた
父「落ち着け。なにがあったんじゃ?」
父の声を聞き少し落ち着きを取り戻すと、俺はAと幽霊池に行ったこと、縄が切れてAが木から落ちたこと、Aの目がおかしくなり狂ったように笑いだしたことをなんとか伝えた
父「いごがんぎじゃ…」
父はそう言うとどこかに電話をかけだした
大人の口から『いごがんぎぃ』を聞いたのは初めてだった
電話が終わると
父「お前は自分の部屋におれ」
そう言い父は出掛けていった
言われた通り俺は自分の部屋に行くと怖くて震えていた
しばらくたち窓から山を見ると一角が赤く燃えているが見えた
翌朝父が帰ってきて『いごがんぎぃ』のことを話してくれた
父「お前らが幽霊池ゆうて呼んどる池のほとりにある神木には鬼が封じられとる」
父「ええか、いごがんぎぃ言うんは『異此眼鬼』こう言う字を書く。別の世界の鬼の眼っちゅう意味じゃ。鬼に憑かれたもんのことをこう呼ぶんよ」
父「Aは封印の縄を切ってしもうたけぇ鬼に憑かれてしもうた」
俺「Aは、Aはどうなったんじゃ!?」
父「…大丈夫じゃ。池に行く前に四軒家があるじゃろ?あそこの人らが鬼を落としてくれたわ」
父「じゃがの、Aの家族はすぐ引っ越すそうじゃ。もう会えんじゃろう」
俺「え?なんでじゃ!?」
父「まぁ色々あるんじゃ。それはお前は知らんでええ」
そう言うと父は話を打ち切った
俺は父の態度と、窓から見えた炎が気にかかっていた
数日後、神木を残し幽霊池のまわりが焼き払われたことを噂で聞いた
やはりAとは会えず仕舞いだ
もしかしたらAは…
どこかでAが幸せに暮らしていることを今でも願っている
怖い話投稿:ホラーテラー Mさん
作者怖話