これは学生時代に友人の友人から聞いた話です。
友人宅で飲んでたら、その友人が来て一緒に飲み、酒の場の話なので真相は分かりませんが。
彼を一人称のオレで表現し、彼の視点から書きます。
免許を取りたてのオレは彼女とのデートの帰りの深夜に猫を撥ねてしまった。
やっちまった
と思って確認しようとも思ったが、眠気と次の日の仕事を考えて急いで帰宅する方を選んだ。
それから1週間ほどしたある夜の深夜。
庭の方から猫の声がする。
近所の猫が盛ってるのか、捨て猫の類だろうと思い、再び眠るが、また鳴き声がする。
今度は自分の部屋の隣から声がする。
声がする。
声が聞こえる。
声が話している。
声が会話している。
高い声「ここか?」
くぐもった声「ここ。
ここ。」
高い声「にゃーん。にゃーん」
くぐもった「にゃーん。」
高い声「こいつからも貰うか?」
くぐもった声「いらない。いらない。
返して。返して」
高い「ワシが取ってやるぞ。魂奪ってやるぞ。
」
くぐもった声「私のを返して、私のを返して」
高い「ほら、扉を開けさせろ、言え。」
くぐもった声「いやだ、いやだ。あんた嫌い」
高い声、強い口調「開けさせろ!
言え!
お前が言えば開く!
恨みを伝えろ!」
くぐもった声「いやだ、いやだ」
しばらく沈黙と静寂の後に、聞き取りにくい、まるでラジオのノイズのような声でボソボソっと会話が続きます。
最後に
くぐもった声だけど、はっきり「にゃーん。」
高い声「くそっ、もう少しで喰えたのに。
明日がある」
オレはずっと震えて聴いていた。
一匹?は跳ねた猫だと確信出来た。しかし、もうひとつは何だろう??
とにかく不安になってしまい、朝まで起きて考えていた。
朝になり、不安が拭えない自分は下の階に降りて台所で両親が起きてくるのを待った。
最初に起きてきたのは祖父。
あっ、こういうのは年寄りがいいかもと思い、跳ねた話と昨夜の事を話す。
祖父「そりゃワシじゃ無理だけん、さんとこで聴いてみたらどうじゃ?」
オレ「さん?誰?」
祖父「△寺のはんだよ。拝みもやっとるらしい。ウチの寺だわな。」
オレは霊感なるものはハッキリとは分からないが少しはあるように思える。
幼少の頃から少しだけそういった体験はある。
故にその拝みさんに連れて行って貰う事にした。
到着して、一時間半ほど前の相談者を待ち、自分の番になった。
八十近い爺様だ。
あらましを伝えた。
爺様「くぐもった声は跳ねた猫さんじゃな。
あんたの肩に乗っとる。
この猫は大丈夫。あんたに跳ねられたが悪い霊にはなっちょらん。
ただ、供養して欲しいようだの。
今日の夕方一緒に行ってお経と花を供えればいい。
ちゃんと供養してやったらあんたを護ってくれる。
いけんのは高い声じゃな。現場に行ってみないと分からんが、もののけの類だな。
跳ねられた猫とか関係はない。ただ、跳ねた場所に関係があると思っとる。
後でワシと行こう。」
とりあえず爺様に従う事にして、夕方を待ち現場に向かった。
現場に着くとそこには爺様と同じような坊主がいた。どっかの住職みたいだ。
隣にはどっかの婆さんがいる。
爺様「◎◎寺の!」
住職「△寺の!」
知り合いらしい。
爺様「ここら辺で障りがあってのぅ、この兄さんが猫跳ねたらしくてな。」
住職「それでか、この人にお祓い頼まれてな。ここには田の神さんの石があるからの。
あんたも来たのは奇遇じゃし、丁度いいわ。」
四人でその石の前に来てみた。
石に血の跡のようなものが着いている。
脇に猫の亡骸。
住職「あらー、この血がいけんなあ。神さんが起きるぞ」
爺様「取り敢えず猫を埋めてやって、お経読んでおくか。
あんちゃん埋めてやって」
この土地は婆さんの土地で、そこの畑の一角を事情を話して埋めさせてもらった。
婆さんは足が動かなくなって住職に相談に来ていたらしい。
話し振りからすると常連のようだ。
爺様「取り敢えず今日は無理だから、あんたは帰りなさい。
今日も(もののけ)来るはずだからこれ持って行きなさい。」
爺様と住職が首から立派な数珠を外して渡してくれた。
住職「この事が終わるまで夜は離さないようにしなさい。」
そのまま爺様を置いて帰る事になった。
そして、夜が来た。
続きます。
怖い話投稿:ホラーテラー 松葉さん
作者怖話