帰宅。
今日の出来事を伝え、会社に熱はもう引いたから明後日から出る旨を伝えた。
ズル休みだが仕方なかったのだ。
のんびり夜を過ごしベッドに入る。
すぼるとが終わって灯りを消した。
五分後。
くぐもった声「今日は埋めてくれてありがとう。」
ん!?
くぐもった声「入ってもいい?」
オレ「いいよ」
撥ねてしまったのに護ってくれるかもなんていい奴だと暖かい気持ちになってたから今日は怖くなかった。
くぐもった声「開けてくれる?」
オレ「うん」
立ち上がろうとしたけど体が動かない。
オレ「ごめん、入ってきて」
くぐもった声「開けてよ」
くぐもった声が少し高くなった。
くぐもった声「じゃあこっちに来て」
オレはこいつ自分じゃ入れないんだなと思った。
金縛りに対抗して力を入れたけど、動けない。
くぐもった声「早く開けておくれ」
力を精一杯入れておきあがろうとした。
ぐっと腹筋に力を入れて少し首を起こす。
その時額に力が加わって枕に押さえつけられた。
手のひらの感触。冷たいけど、ほんの少し暖かい感触でなんともいえないいい匂いがした。
直感で「ああ、これは起きてはならない、開けてはいけないって事なんだと思った。」
待てよ。オレの肩に乗ってるっていう猫がなんでここに入れないんだ??
遅くなったけど、今更ながら気付いた。
ドアの向こうでは猫のにゃーんが聞こえる。
こりゃ、間違いなく偽物だ。あの爺様が言ってた「高い声のもののけ」だって分かった。
オレ「あんたは猫じゃない。」
高い声「次は必ず食うてやる」
ダダダダダダダっと足音が遠ざかって行った。
少なくとも猫はそんなけたたましい音はさせない。
なんとなく今日はもう来ないと分かったから寝れた。
爺様に連絡すると二日後に来るように言われた。
二日後。
爺様「もう終わったから大丈夫だよ。」
事情を聞いた。
昔あそこに得体の知れないもののけがいた。山から降りて来たらしい。
近くの神社から神主が来て封じる為にその土地の神様にお願いして封じてもらったそうだ。
神様は田の神様で水の神様らしい。井戸の精霊がどうたらこうたら言われたが長くなったので詳しくは忘れた。
田の神様でももののけを殺す事は出来ないようで封じ込めるだけの形になったようだ。
そして月日が過ぎたある日の夜に猫が供えらる形になり、もののけだけが起きた。
そして最初に猫を追ってオレの部屋に行き着いたらしい。
あの日オレが帰った後、次の日に坊主二人(爺様と住職)は話し合い、知り合いの神主にお祓いをしてもらったらしい。
さらに二人で長いお経を上げて事を済ましたようだ。
爺様に数珠を返し、もうひとつの数珠を返しに住職の寺に向かった。
住職はついでにこんな話しもしてくれた。
田の神様は封じ込める事に力を貸してくれたけど、眠っている状態だった。
もし起きていたら神様の怒りも着いてきて、あんたは持って行かれてただろうと。
田の神様に限らず土地の神様ってのはいい事ばっかりじゃない。違う側面もあるし、中には悪い面ばっかりの神様もいる。
道理や摂理は通じないし、尚且つ力は桁違いに強い。
だからきちんと祭司しないといけないと。
オレはそれからその神様の祭られている石を定期的に洗いに行っている。猫の墓にも手を合わせている。
ひとつ疑問が残る。あの二度目の来訪の時にオレの額を押した手はなんだったんだろうか?
という話しを友人の友人から聞いた。
帰ってから拝み屋のばあちゃんに聞いてみた。
ばあちゃん「多分、ご先祖さんだよ、そりゃ」
と答えが返ってきて納得した。
長い話しで文才ないですが、読んで下さってありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 松葉さん
作者怖話