少女は恋をしていた。
狂おしい程。
その男は少女の通う高校の教師。男にとっては遊びでしかなかった。
高校生の、その若い体目当ての。
しかし、男は行為をする度に少女の耳元でささやくのだ。「愛している」
彼女はそれに答える。「先生、私も愛してるわ。ずっと一緒にいてね。」
先にも言ったように、男にとっては遊び。飽きるのもはやい。やがて「忙しい」と言って少女と二人きりでは会わなくなる。
異変が起きたのはそんな頃。
学校帰りに後をつけられる。夜中に電話が鳴る。何度も、何度も・・・男は携帯の電源を切る。ふと窓の外を見ると、少女が見上げている。
男の姿を確認してニヤリと笑う。
男は狂う。
そして、電話をとる。
「明日、放課後、二人で会おう。」
夕暮れの、人気のない学校。
男は少女と体を重ねる。
見つかれば大問題。
しかし、ここには誰も来ない。ある科目の準備室。先生だけが使う部屋。
男は今日も囁く「愛している」すでに何の感情もない言葉。
男の手はゆっくりと、しかし確実に少女の首をしめる。
少女はそれでも、今日も答える「先生・・・ずっと・・・一緒・・・」
男は囁く。
「愛している・・・あぁ・・・死んでくれ・・・」男の絶頂と共に、少女は息絶える。
男は、しばらく呆然としていた。そしてふと我に返る。
「あぁ、死んでいる・・・」
幾時かの時間が過ぎ、男は動きだす。
階段の踊り場の鏡を外し、壁を掘る。
ザクザク・・・
ザクザク・・・ザクザク・・・
少女を埋める。
塗り固める。
自分の罪と共に・・・
少女は行方不明になった。
鏡の後ろ、新しく塗り固められた壁には誰も気付かない。
・・・
数日後、男はその踊り場にさしかかる。
「先生・・・」
そこには・・・
少女が立っていた。
男の前に立っている。
無論、男の前には誰も居ない。しかし、鏡には確かに映っている。
男は頭の中でつぶやく「そうか、俺の前で鏡を見ているんじゃないんだ。鏡の後ろから俺を見ているんだ。」
少女が近づいてくる。
耳元で囁きが聞こえる。
「ずっと一緒って言ったじゃない。」
少女が見つかった壁の中、
もう一つの遺体が見つかった。
*もちろん作り話です*
たぶん壁は固まる前に崩れます。人の重みで。
怖い話投稿:ホラーテラー 零さん
作者怖話