短編2
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山姫3

長くなって本当に申し訳ない。でもきちんと話さないと皆さんに伝わらないと思うので。ご理解頂ける方のみお付き合い下さい。

その“立て札”を気にせず僕らは進み、生い茂る木々や景色、Y島が醸し出す独特の匂いを楽しみながら歩いた。

約1キロ程行った僕らは、小さな山小屋を見つけた。小さいと言っても10~20人は入るであろう小屋だ。

C「ちょっと休憩しよう。先行者の人もいるだろうし、地元の人にしかわかんない“山の事情”もあるからな。」

僕はCの言う“山の事情”の意味がイマイチ理解できなかったが、雨も降り出しそうだったし、一同賛同して山小屋に入った。

ドアをあけると先行者と思われる男達が6人程おり、山小屋のオーナーだと思われる60代位の男が無表情でカウンター奥でコーヒーをすすっていた。

C「お邪魔します。少し休ましてもらっていいですか。」

「適当な所に掛けて。寒かったろう。大学生?」

などと言いながら、オーナーだと思われる男は暖かいコーヒーを出してくれた。意外と気さくな人らしい。

オーナー「たぶん、これから荒れるよ。今日の所はやめて、また明日登山した方がいい。一昨日も大荒れでね、忠告を無視して下山しなかった青年が凍死した状態で、中腹のM岳で発見されたよ。」

僕らはそれを聞いてうまくリアクションができなかった。しかし、卒論やバイトなどもある僕らにとって何より“時間”が惜しかったのも事実だ。

B「あの‥“山姫”ってなんですか?立て札があったんですけど。」

唐突にBが質問を投げかけた。

オーナー「う~ん。あまりこの〇〇小屋で話すのは良くないんだけどね。まぁ一応話しておくよ。Y島に何百年も前から伝わる伝承の一つさ。」

オーナーの目つきが一気に変わったのを、僕は見逃さなかった。

山姫というのは、木の精霊、山の神として恐れられており、

白い着物を着ているとても綺麗な女性の姿らしい。遭遇したら目を決して合わせてはならない、という物だった。また守り神という風にも捉えられており、とにかく“畏敬の何か”だということは確かだった。

特に中腹のM岳にある、S小屋という山小屋付近で山姫の目撃が最も多く、オーナーも若い頃にその付近で山姫に遭遇した事があるという。

オーナーが山姫に遭遇した話が、現実に僕らの身に起こる事をこの時僕らは予期していなかった。

4に続きます。

是非お付き合い下さい。

怖い話投稿:ホラーテラー ケンジさん  

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