短編2
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受信

「夏休み何する?」

いつもの道を親友と話しながら下校していると不思議な光景が目に映った。

平屋建ての家の屋根の上に人が立っている。

何か作業しているわけでも無く、ただ直立不動で空を仰いだまま動かない。

「プッ…」それを見た俺は思わず吹いてしまった。しかし隣を見ると親友は怯えたような不安なような顔をしている。

親友の家はこの近くだ。あの屋根の上の人は「知り合いだ」と言っていた。

親友は「風邪かな?頭が痛いよ」と言いながら帰っていった。

翌日、学校へ行くと親友は欠席だった。先生は特には理由を言ってなかった。

そして下校時間

親友宅にお見舞いに行こうかな?と思いながら歩いていると…あれ?

屋根の上に人が立っている。昨日の家とは別の家。しかも、このあたりの家すべてだった。

嫌な予感がして親友宅へ走る。

息を切らしながら親友宅に着き屋根を見上げる…

いた…親友だけではなく家族全員…

「おーい!」声をかけるが反応が無く空を見上げたままだ。

怖くなり俺は家へと走り帰った。家に帰り着くなり部屋にこもり布団に潜り震えていた。

いつの間にか寝ていたようだ。

2階の部屋から1階のリビングへ降りている途中で話し声が聞こえてきた。

「………このあたりが……受信地域に……なったみたい」

受信??アンテナみたいになった親友…親はこの事態を知っているのか。

とても気になったが子供心に聞いてはいけない気がして部屋へと戻った。

翌日学校へ行くと

クラスの半数近くが欠席していた。

それでも先生は何事も無く授業を進める。

いつもの世界が違うように思えてきた。

頭の中で何か響いている…頭が痛い…

下校時間

もう町の大半にアンテナ人間が立っている。

頭の痛みが強くなる。頭の中で誰かが何かを言っている。

家に着いた。

屋根の上で両親が立っている。もう驚きはしないが涙が出た。

――この町を出るしかない

そう思い俺は走りだした。

学校を過ぎ町外れの橋にさしかかった時

ガッ

腕を捕まれた

そこには迷彩服を着た男がいた。

「最後の一人、確保しました」無線で話している。

そして俺に向けて「家まで戻るぞ」と言った。

軍用車に乗せられ両脇に体格の良い男が座る。

「あと30分、ギリギリ戻ってこれるな?」

「ああ、大丈夫だろう」

何か話していたが俺にはもう聞こえていなかった。

窓の外に見えたマンションの住人もテラスに出て空を見上げている。すべての部屋の住人が。

何も考える余地も無い。

繰り返し頭の中で響いている

「試験電波発信マデ30分 所定ノ位置デ待機シテクダサイ」と…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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