短編2
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閉じこめられた世界

おれは狭い水の中に住んでいる。

前は、もっと広い所に住んでた。

そこは、ここよりも水は澄み渡りキレーで、食べ物もたくさんあった。友達もわりといた。おれや仲間を狙う敵はたくさんいたが、おれ達も自分より弱い奴らが糧だった。そいつらからしたら、おれ達はとんでもなく疎ましい存在だったんだろうな。でもそれがそこで生き抜く為のルールというか‥掟みたいなもんだったから、そこは暗黙の了解ってヤツだ。そこで生きて生活してる奴らは、みんなちゃんと割り切ってる。恨みっこなしだ。

そこで生きてくのは本当に厳しくて大変だったが、辛くてもみんなが誇りを持って頑張って生き抜いていた。

毎日を「生きている」って感じていた。

ところが今はどうだ。

なんなんだここは。

真四角な世界。

すげぇ狭い。ちょっと移動しただけですぐに壁にぶつかる。しかもここにはおれだけじゃなく、他に4人くらい住んでいる。

住む広さと住んでる奴の数が比例してない。

しかも水は、おれ達の糞尿や食べカスでまみれ、汚く淀んでいる。前住んでいた所では気にならなかったが‥ここでは10日以上経たないと綺麗な水に変わらない。

前までは、ここに住み始めの時はたくさんの食い物にありつく事ができた。だが今は4~5日に一回、少量だ。もうみんなで奪い合い。おれが、いやおれによこせって。

しかも、おれらもう喧嘩ばっかだ。やれぶつかっただ、目が合っただ、縄張りだのなんだのって。こんな場所じゃそんなもん何の意味も成さないが、これはおれ達のいわば本能ってヤツだ。この間も新入りが、脱皮中に食われた。共食いしまくり。

なんでおれ達はこんな場所にいる?

もう、あの場所に帰れないのか?

‥あぁ‥やべぇ‥意識なくなってきたな‥しばらく何も食べてねぇし‥

おれ以外は、もうみんな死んでる。餓死やら共食いやらで。すげぇ臭いだ。

‥ダメだ‥。

「ただいまー!あ~キャンプ楽しかった!ねぇパパ。」

「そうだなぁ。夏休みしか行けないもんなぁ。ハハハ。」

「‥ねぇちょっと。ベランダ来てよあなた達。」

「なぁにママ?」

「ザリガニ死んでるわよ~すごい臭い。だから嫌だったのよ、生き物を飼うなんて。」

「ごめんなさい‥。でもまぁまた新しいのとってくればいいや。

‥あー‥また共食いしてたみたい。やっぱ水槽に入れる数が多すぎたんだなぁ。」

「早く捨てて来るんだぞ。」

「はーい。」

終わり

怖い話投稿:ホラーテラー ゆうさん  

Concrete
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