中編3
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アムヨ

今日はお祖父ちゃんが来る!!

待ちに待った夏休み。

青く澄み渡った空に、ポカンと浮かんだ入道雲。

大きく息を吸うと、うっすら潮の香りがする。

近くの山からは様々なセミ達のオーケストラが聞こえる。

ここは九州の左端の田舎町。

海に近く、山にも近い。

田舎とはいうものの、団地住まいだから友達にも不足しない。

そんな所で育った俺の小学生の時の話。

家族との旅行の予定も消費し、これといってイベントもなくなった夏休みの後半。

お祖父ちゃんが来ることになった。

母に頼まれ、バス停まで迎えにいくことになった。

『おう、S。元気しとったか?』

いつもニコニコしていて、恵比寿さんのような福耳を持つお祖父ちゃんが大好きだった。

他愛もないことをはしゃぎながらお祖父ちゃんに話すと

『そうかそうか。』

とニコニコ相槌を打ってくれる。ニコニコの笑顔が大好きで、いろんなことを話していた。

しかし、僕が住む棟についた時、急にお祖父ちゃんの笑顔が消え、近くの駐輪場のある一点を見つめている。

目線の先にあったのは…………

蚊。

うん、蚊。

めっちゃデカい。

ガガンボって知ってるかな?蚊のデカい奴。

デカいっつっても、手のひら二つ分ぐらい。

地域によっちゃーカトンボとか呼ばれているらしい。

でも、デカい。

当時小学四年生だったが、幅が両手いっぱいぐらい。高さは、胸ぐらい。

正面から見ると→Mみたいな形。

えっ?と、思っているとお祖父ちゃんの優しい手が目を覆った。

『アムヨか。そうか、まだおったのか。近頃は緑も随分減っとるばってん、そうか、まだおったか。あれはな、神様なんだよ、S。悪かもんでも、良かもんでもなかばってんな。』

アムヨと呼ばれたそれは、蚊独特のブ~ンという音と共に、こっちに近付いているようだ。

姿を見ようとジタバタするが、お祖父ちゃんの手はあくまで優しく、しかし強く目を覆っている。

『見ちゃいかん。いや、見んちゃよか。蚊は気付かれないように近付いて、血ば吸い、そして痒みば残す。

アムヨも同じようなもんばってん、ちと違う。

気付かれないように近付いて、血じゃなくて寿命を吸う。

しかし、痒みじゃなく、吸われた本人以外に幸福ば残す。子宝だったり、財産だったり。

しかし、気付かれると蚊のように逃げてしまう。

S。Sは、他人の幸せを願える人になって欲しい。』

そう言うと、お祖父ちゃんは

『うっ。』

っと唸った。

あぁ次は自分の番なんだ、と思ったがあのブ~ンという音は遠のいていた。

『幸運が舞い降りたのう。』

白々と視界が元に戻ると、またあのお祖父ちゃんの笑顔がそこにあった。

『S。わしはS達孫らの幸せがいっちゃん嬉しか。寿命が短くなるなんて、蚊にさされたぐらいのもんさな。』

と、ガハハハと笑った。

それから10年ほどして亡くなったが、アムヨのせいだったのかは分からない。

ただ、孫一同みんなスクスクと育っています。

皆、お祖父ちゃんが大好きです。

アムヨがなんだったのかは、全くわからない。

ただ、お祖父ちゃんの愛を再確認させてくれた一件でした。

アムヨについて知っている人はカキコをお願いしたい。

他のご老人に話を聞くと、アムヨの姿は神社の狐だったり、シダレヤナギだったりまちまちのようです。

多分擬態しているのだと思います。

妖怪なのか神様なのか。

気になります。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿タイ製改め、罰天さん  

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知らんやったぁ(゜д゜)
そう言えばデカい蚊って最近見らんですばいな( ー̀ωー́ )