短編2
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裁きを待つ間 三人目

僕は死んだ。

何故死んだかは思い出せない。

気がつけば知らない部屋にいた。

部屋は壁、天上、床までもが真っ白に塗られており、部屋の中央に椅子が置いてあるだけで他に物は何もない。

そしてこの部屋には黒猫が一匹いる。

しかもこの黒猫、驚くべき事に人間の言葉を話すのだ。

「お前は死んだ。そして今お前が天国に行くか、地獄に行くかの裁きがおこなわれている。まぁすぐに決まらねえから、暇つぶしにオレの話でも聞いてな」

と黒猫はいった。

「これはある男の話だ」

男はある女に恋をした。

いわゆるひとめぼれというやつだった。

しかし、男には女との接点がなく、かといって声をかける勇気もなかった。

ある日男は思い切って女の後をつけてみた。

そして男は女の住んでいるマンション、部屋を特定することが出来た。

その日から男は女のマンションの近くに度々現れるようになった。

ある日男は女に手紙を書き、それを女の部屋の番号がかかれたポストの中に入れた。

そして女はその手紙を見つけ読んだ。

女は

「ヒィ!」

と短い悲鳴をあげ、その手紙をビリビリに破いて捨ててしまった。

しかしその姿を見ていた男は不思議とショックを受けなかった。

むしろ喜んだ。

女の恐怖した顔に愛しさを感じたからだ。

男の行為はエスカレートしていった。

部屋のベランダに動物の死骸を投げ込んだり、箱に入れた自分の糞尿をポストにいれたもした。

女の恐怖する顔が見たい。

いつしか男はその事ばかりを考えるようになった。

そして男は思った。女の部屋を荒らしてみてはどうか。

そうすればもっと恐怖する顔が見られるのではないかと。

女が外出したのを確認すると男はマンションの中へ入り女の部屋の扉のノブを捻った。

驚いた。

扉は簡単に開いてしまったのだ。

男は部屋の中に入った。

しかし男は女の恐怖した顔を見る事はなかった。

死んでしまったのだ。

「ちょっと待て!男は突然死んじまったのか?」

「殺されたってのが正しい」

と黒猫はいい、続けた

「女の恐怖する顔を見て喜んでたのは自分だけじゃなかったって事だよ」

音が聞こえた。

いつの間にか壁に扉ができていてそれが開いていた。

「終わったみたいだ。いきな」

黒猫はいった。

途中、黒猫の声が聞こえた。

「男は気付いてなかったみたいだが、実はその女ってのは男性だったんだぜ」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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