短編2
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6月の悪霧

山あいの集落にばあちゃんの家はある。

小学校低学年の頃に深い霧の山に入り怒られた事があった。

休日に親が農作業の手伝いの為にばあちゃん家に行った時の話。

空は暗く小雨が降っていた、しかしそこは元気盛りの小学生。暇なのも相まって1人で探検を始めた。

普段はコンクリートに囲まれた生活だったのでワクワクしながら山に入っていった。

しばらく昆虫採集に我を忘れていると迷子になる。どちらから来たのかさえ分からなくなった。

霧が出てきて昼間だというのに薄暗い。怖くなって泣きそうになってきた。

転んでケガをしたが誰も助けてくれない。ついに泣き出しそうになった時、遠くから声が聞こえた。

「……………」

何を言ってるのか聞き取れない。

立ち止まっていたら辺りを完全に霧で覆われた。数メートル先が霞んで見える。

進めないでいると突然誰かに手を掴まれた。

ぼんやりした白く冷たい手だった。しかもそれが

何本も

こちらに伸びてきている

俺が恐怖で悲鳴を上げた時だった、反対の手を掴まれた。今度は暖かくて優しい…ばあちゃんの手だった。

「さあ帰るよ、後ろを振り返らないようにするんだよ」

手を引かれながらようやく山から出てこれた。

このあと叱られたのは言うまでも無いが、ばあちゃんがこんな話もしてくれた。

「特に梅雨時の霧が深い日、空の雲が低く山からの霧が上に昇って行って繋がった場所は昔から神隠しが起こりやすいと言われてるんだよ」

嫌な予感がしたばあちゃんは俺を呼びながら、その『霧の柱』に駆けてきたそうだ。

俺は今でもこの季節の山が怖い

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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