中編6
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Armd core

連日の真夏日。

こんな日は、何か涼めるものを探したくなる。

午前1時…

俺達3人は、町外れの病院跡地に居た…

鉄条網で仕切られた病院の敷地と外の世界。

俺達は、わざわざ鉄条網を越えて、病院の敷地に侵入した。

辺りには虫の鳴き声が響いている…

「よし、全員、ライトは持ったな?」

リーダー格で軍事オタクのIが意気込む。

Iは1人だけエアガンで完全武装?して、まるでこれから戦争に行くかの様な雰囲気…

俺とNは、そんなIの問い掛けに軽く頷いた。

3人は、LEDライト片手に病院の中へ…

病院の受付ロビー…

以外にも中は綺麗だ。

誇りやカビ臭い臭いはあるが、荒らされた様な形跡は一切無かった。

そして、当たり前だが、とりあえず暗い。

俺達は案内図を探すために、辺りをライトで照らし出しす………と、

「エフ・ビー・アーイ!!(F.B.I.)」

「おわぁっ!!!!」

突然、Iがライトとエアガンを構えながら叫んだ。

そして、それに驚いたNがいきなり悲鳴を挙げた。

俺もビクッとした。

「何だよ、いきなりデカイ声出すな!!」

「バカ、これが突入の基本だろ?」

「何の突入だよ…」

「………、受付ロビーエリア、クリア!」

俺の冷静な突っ込みをシカトして、Iは完全に自分の世界に浸っている…

仕方ないからIを先頭にして、(と言うより自分から先頭に立ってた)その後に俺とNが続く。

受付ロビーから右へ、俺達が向かっているのはこの病院の元手術室だ。

この手術室が心霊スポットになっていて、夜な夜な患者が乗っていない診察台を押して歩く看護師が出るだの、戦時中にこの近くで死んで行った子供の集団が出るだのと、色々な噂があった。

「こちら、グリフィン2。オペレーションルーム前に到着…」

Iのあまりの真剣さに、思わず吹き出す俺とN…

こいつそんなに軍隊が好きだったとは…そもそもお前誰と交信してんだよ?と。

Iの暴走はその後も続く。

手術室の扉を開き、中に入った俺達が目にしたのは、天井に吊るされた手術用の大きなライト、それと錆びた診察台だった…

他には一切何もない。

俺は逆にそれが怖かった。

「グリフィン2から、HQ。目標発見ならず。プランDを開始する。」

「おい、I。お前、ホントに軍隊が好きなんだな。」

NがIに聞いた。

「…?何を言ってる?

まぁいい、急ぐぞ、ハインリヒを救助しなくてはならない。」

「ははは、誰だよ、ハインリヒって!?」

俺は若干、Iも怖かった。

手術室を後にした俺達は、スタスタと先頭を行くIに続いて進んだ。

数分歩いただろうか?

ある部屋の前で、Iが足を止める。

『霊安室』

古ぼけたタグにはそうあった。

「…ここだ。」

「マジかよI?ここはさすがにヤバイだろ?」

「俺もそう思う、大体、こういう部屋は鍵とかかけられてんじゃねーのか?開かねぇよ、絶対。」

正直、俺はさっきの手術室よりも、こっちの霊安室の方にただならぬモノを感じていた。

それはNも同じ様子だった…

ただ1人、Iを除いて…

「グリフィン2、ルーム522へ突入する…」

ガラララッ…

勢いよく霊安室の扉を開いたI。

「Hold your hands!

and drop your gun now!!」

『(両手を上げて、銃を床に捨てろ、今すぐにだ!!)』

I、ついに壊れたな…

このIの姿が、一番怖かった。玩具の銃とはいえ、その構え方は最初の「エフ・ビー・アーイ!」の時とは全く違うし、何より目が真剣だ。そして、霊安室の中をしきりに警戒した様子で見回している…

「な、なぁ、I。

もう帰ろうぜ…」

「What? What are you talking about?

Do you forget our mission? We must be get back Hainrighe.」

『何?お前何を言ってるんだ?俺達の任務を忘れたか?俺達は、ハインリヒを連れ戻さなきゃいけないんだ。』

「おい、I!もうふざけんのはよせよ!

出来もしない英語を無理に使ってまでして、…ふざけんのもいい加減にしろよ!」

「そうだ、Nの言う通りだ…もう帰ろうぜ、ここ何かやな感じがするしよ。」

そういう俺達を無視して、Iは霊安室の中を物色し始めた…

「おい、I!」

NがIの肩に強く手を掛けた。

IはそんなNを軽々はじき飛ばした。

「……っつ、てめぇ!」

「………!?」

怒って立ち上がろうとするNにIはエアガンの銃口を突き付けた。

たかだかエアガンなのだが、Iの真剣な視線が怖かった。

結局、俺とNは霊安室の入り口辺りでIの行動を見ているだけしか出来なかった…

Iは、誰かと話しているかの様な口調で霊安室内の遺体安置用ロッカーを開け閉めしている。

「Bingo!I found it.」

『よし、見つけたぞ!』

Iがそう叫ぶとほぼ同時に、霊安室の床がガタンッと音を立てて、浮いた。

そこをIはライトで照らし出した。

ライトの明かりの先…

浮きあがった霊安室の床の下には、階段通路が姿を覗かせていた…

明らかに、ヤバイのがわかった。その階段通路が、この先には来るなと言っているようにさえ思えた…

「お、おいI…」

「OK.Lets move out!

Follow me!」

『よし、行くぞ!付いてこい!』

…仕方なくIに続いた。

縦横2mちょっとの狭い階段通路。

階段はしばらく行ったところで途切れ、その先に平坦な長い廊下が一直線に続いている。

そして、不気味な事にこのフロアだけ電気が通っている様で、薄暗い白色灯が廊下に等間隔に灯っている。

廊下は黒ずんだ海苔みたいなものが散乱していて、さらに驚いたことには、廊下の左右は全て牢屋になっている…

さすがに人は居なかったが、血痕なのか?壁に赤茶色の飛沫痕が無数にある。

俺とNはそんな光景にビビリまくっていたが、Iだけは、エアガンを前に構えたまま、廊下最奥をずっと見据えていた。

廊下の突き当たりにある赤錆の鉄の扉…

「……うぇぇ、ゲホッ

エエエッ、ゲホッ、ゲホ…………」

Nが突然嘔吐した。

俺はそんなただならぬ雰囲気が怖く、苦しそうに嘔吐するNに手を貸してやることすら出来なかった…

Iはこちらには全く無関心…

やがて、赤錆の扉の前に着いた俺達。

扉は開いているようで、中からはひんやりした空気が流れてきていた。

ガタンッ!

Iは激しく扉を開け、部屋に突入…

その様はまるで本物の軍隊が突入するかのような迫力に溢れていた。

Iに続いて部屋に入った俺達の目に飛び込んできたのは、大きなガラスの中に液体と一緒に閉じ込められた数人の人間だった…

既に腐敗していて、ガラスが死体を密閉しているから臭いはないものの、視覚的にかなりきつい…

ここで、俺も耐えきれず嘔吐した…

「Hinghrihe...」

『…ハインリヒ。』

Iがもの悲しげにそのガラスの中に並んだ死体の内の一体に近付いた…

ゴボ…

「………!!?」

Iが近付いた瞬間、死体が動いた。動いたように見えたのではなく、確実に動いていた。

「駄目だ!!おい、N!Iをここから引っ張り出すぞっ!!!!」

俺とNは凄い力で抵抗するIを無理やりガラスの前から引き剥がして、大急ぎでもと来た道を引き返した。

………

なんとか、病院の外まで引き返せた俺達…

Iは途中で気を失っていた…

後日…

Iと会った俺達はあの時の事をIに聞いた。

「何言ってんだよ。

俺達、病院入ってスグに案内人みたいな外人が来て、その人に付いて行ったろ。ほら、『ここはお化け屋敷です。私が案内人のハインリヒです』ってさ。でもまさかあんな廃病院をお化け屋敷として使うとはね…

それにあの外人、あんなに軍人に成りきってて、めっちゃウケたわ!」

………そのIとの最後の面会からさらに後で知った事だが、あの病院は戦時中に捕虜収容所として使われていたらしい…

そして、その捕虜を救助しようとある特殊部隊が病院に侵入したらしいのだが、彼等も身柄を拘束され、しかも、当時の軍が開発していた細菌兵器の実験台にされたとか…

怖い話投稿:ホラーテラー ジョーイ・トリビアーニさん  

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