短編2
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陽炎②

そこは民家の影であった。そのひと時の涼しさに一息ついたのも束の間、違和感の正体を知った。

陽炎は太陽光の屈折により起きる現象である。

日陰では起き得ない。

涼しさは悪寒に変わった。

その瞬間、私の足を何かが強く掴む。

振り払おうと思わず足を上げたが、バランスを崩して尻餅を付くと同時に見てしまった。

陽炎ではなかった。

透明な老婆が苦悶の表情を浮かべ這いつくばり藻掻いている…。

老婆は、苦悶の表情のまま、動けない私に向かってゆっくりと手を伸ばしてくる…。

もう間もなく顔を掴む…。

『どうしました?』

その声と同時に老婆は消えていた。

声を掛けてくれたのは、帰宅中の高校生だった。日陰を作っていた民家の住人だそうである。

尻餅を付き、顔面蒼白で直ぐ近くまで近寄っても気が付かない私を心配してのことだ。

私は適当に気分が悪くなっただけ…と、誤魔化し、少し日陰で休んで行くと説明すると、彼は一言挨拶して家に入っていった。

何だったんだ…。

私は暫く立ち尽くしていた。

仕事に行かなければ…。そう思い直し、前に向き直したときだ。

ドン!

音を発てるように玄関のドアを蹴り開け、さっきの高校生が飛び出してきた。

『どうした?』

驚きながらも、今度は私が聞き直していた。

落ち着かせ話を聞いた後、家の中に駆け込むと、おばあさんが苦悶の表情を浮かべたまま倒れていて、既に亡くなられていた…。

熱中症であった。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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