中編4
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クソジジイ。

おれには親父がいた。

おれは昔、結構バカな事ばっかりやらかしてて、いつもお袋泣かしててさ。

その度におれは親父にぶん殴られてた。

もうそれが痛いのなんのって。

どんな奴に殴られるよりも、親父の拳が一番強烈だったね。

今思えば、親父の拳には親の愛っていう重さがあったんだろうな。

ちょっとクサいかもだけどさ。

だからおれも負けたくないから歯向かって、痛ぇじゃねぇか、クソ親父っつってよく親父と取っ組みあってた。

そんで親父が、母親泣かす様な奴は男じゃねぇ、筋は通しやがれバカヤロウって怒鳴ってたな。

親父は下町育ちのチャキチャキの江戸っ子でさ、絵に描いた様な頑固親父。

工務店を経営してて、わりと地元の人達に慕われてたと思う。

まぁそういう親父。

手は早いわ、怖いわ、やかましいわ、痛ぇわで、親父はおれの中で大嫌いな存在だった。

でもそんなある日。

また親父と大喧嘩したおれは家から飛び出してさ、2日間帰らなかった事があって。

理由は将来、親父の店継ぐ、継がないとかいうくだらない言い合い。

そんでバツ悪そうに家に帰ったら、お袋が顔くっしゃくしゃにしながら

「あんたどこいってたの!お父さんが‥お父さんが死んじゃったのよ!」って言うんだよ。

あの日、家から飛び出したおれを探しに行った親父は、飲酒運転してたトラックに轢かれて即死だったんだと。

おれは信じられなくて、あのクソジジイが死ぬ訳ねぇだろ、って。

でも親父の変わり果てた姿見て、現実に直面した。

でも葬式やるまで正直、実感沸かなかった。

通夜終わって、親父のニコニコ笑ってる遺影見たら急に冷静になっちゃってさ、ボロボロ涙出てきちゃって。

あんなに大嫌いだったのに。

皮肉なもんで、失ってから気づいたんだ。

あぁ、おれは親父のこと大好きだったんだ、大切だったんだなって。

でも気づくのはいつだって遅そくて。

おれはいつもそうなんだ。

そんで、‥もしかしておれが親父を殺したんじゃないか、おれがあの時かんしゃく起こして家を出て行かなかったら、親父は死んでなかったんじゃないかって思い始めた。

おれのせいで親父が死んじまった‥

おれは、もう訳がわかんなくて夜中バイクで泣きながらひたすら飛ばしまくった。

キキーッッ

気づいたら対向車におれは正面衝突。

世界がぐるんと回って、目の前が暗くなった。

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気づいたらおれは真っ暗な所にいた。

‥なんだここ?

遠くに光が見えたから、そっちに向かってとりあえず歩いてったら、目の前に親父が立ってたんだ。

死んだはずの親父がだ。

おれはもうテンパりすぎちゃってさ、何回も目をこすったよ。

親「お前がこっちに来るのはまだ早ぇ。」

俺「クソジジイ‥。」

親「悪かったな、お前ら遺してこんな事になっちまってよ。」

俺「何言ってんだ、謝んのは俺の方だろ!?」

親「それとよう、別にお前は店を継がなくていいぞ。お前の気持ちも考えねぇで、押し付けちまって悪かった。お前の人生だ、好きに生きろ。」

俺「‥何言ってんのかわかんねぇよ‥いつもはそんな事言わねぇくせによ‥わかんねぇよ!」

親「お前のこれからを近くで見てたかったけどな、無理みたいだ。すまねぇな。だから、向こう側で見届けてやる。筋はきっちり通すんだぞ。」

俺「いつもは絶対謝らねぇ頑固ジジイのくせによ‥」

親「そろそろお前は戻った方がいい。元気でやれよな。母ちゃんの事よろしく頼んだぞ。いつまでも、母ちゃんに守られてるんじゃなくて、お前が母ちゃんを守るんだ。ほら、母ちゃんが呼んでるぞ。行ってやれ。」

俺「親父!」

目を開くとそこは病院だった。

目の前にはさっきまでいた親父じゃなく、泣き顔でおれの名を叫ぶお袋がいて、おれに胸を埋めてきた。

後から聞いた話だが、おれはかなり危険な状態で丸一日、生死をさまよっていたらしい。

医者の見立てでは、あの危篤状態から一命を取り留め、さらに何の後遺症もなく完治したのは奇跡だと。

お袋はおれが意識を取り戻すまで、ずっとおれの名を読んでいたそうだ。

おれはたまらず、お袋の手をギュッと握ったよ。

それからしばらくして、おれは悪さもやめ、悪友とも手を切った。

学校を卒業した後、夜学に進学し親父の店を継いだ。

おれで3代目だ。

親父はあの時おれに、店は継がないでいい、なんて言ってたけど、やっぱりおれは親父の宝物であるこの店を守りたいって思ったから。

本当に、心から思った。

結婚もして、子供も3人生まれた。

今はおれが親父だ。

お袋は“おばあちゃん”になって孫に囲まれながら幸せそうだよ。

お袋の笑顔見る度、まぁ一応、親父の遺言通り親孝行できてんのかなって思う。

今度はおれがしっかり親父として、家族を守っていかなきゃな。

ありがとう、―クソジジイ。

怖い話投稿:ホラーテラー へいぽーさん  

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