中編2
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 彼女は貴重な友人だった。

 年上のせいか、俺に対していつも寛容で、落ち込んだりしたときには励ましてもくれた。

 情けないとこ見せちゃったね…と俺が自嘲気味に笑うと、

「気にしなさんな。アタシはアンタのお姉ちゃんみたいなもんだからさ」

 そう言って笑う彼女の顔には屈託がなく、だから俺はいつも安心して彼女に甘えられた。

 俺が唯一、何の隠し事もせずにいられる存在…それが彼女だった。

 仕事の失敗も、恋人との喧嘩も、彼女には包み隠さず話せた。

 つまらない話を聞かせてごめん…電話口で呟くと、

「いいっていいって。アタシはアンタのお姉ちゃんみたいなもんだからさ」

 大きな取引を成功させた喜びの報告も、恋人へのプレゼントの相談も、真っ先に彼女にしていた。

 いつも聞いてもらってごめんな…そう言うと、彼女はいつも通り、

「教えてくれて嬉しいよ。アタシはアンタのお姉ちゃんみたいなもんだからさ」

 と言うのだった。

 寂しさに耐えきれず、彼女の肉体を求めてしまったこともある。コトが終わってひたすら謝る俺。

 彼女はそんなときも悠然と微笑みながら、

「アタシにできることならしてあげたいのよ。アタシはアンタのお姉ちゃんみたいなもんだからさ」

 そう言って俺の頭を撫でたのだ。

「アタシはアンタのお姉ちゃんみたいなもんだからさ」

 そう言って豪快に笑う彼女の存在に、俺はいつも救われていた。甘えていた。

 

 その彼女が、突然死んだ。ずっと体を病んでいたことを知ったのは、葬儀の席だった。

 刻々と悪化する病。苦しく、恐かったに違いない。でも、親御さん以外の誰にもその苦しみを漏らすことはなかったという。

 この俺にも。

 ずっと助けられるばかりだった。俺は彼女の辛さも苦しみも、何もわかってやれなかった。

 悔しくて涙が溢れた。俺はなんと出来の悪い弟だったのだろう。

 彼女の優しさは、失われゆく自らへの存在を他者に刻むためでもあったのかもしれない。

 ごめん

 ごめん

 ごめん

 ごめん…

 遺影に向かい何度も謝った。

 帰り道、俺の携帯が鳴った。見ると彼女からのメールだった。

 驚いたが、どうやらグリーティング設定してあったらしい。姉として、最期まで俺のことが心配だったのか。

 今の俺の気持ちまで見越していたのか…そう思ってメールを開くと、そこにはただ一言、

「アンタはアタシのもの。逃がさない」

怖い話投稿:ホラーテラー モドキさん  

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