中編3
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親友のお母さんの話。

※おそらく、これは厳密には怖い話ではありません。

当時、怖さと哀しみを同時に味わった実話です。

 

当時の私は中学2年生。

かれこれ20数年前のお話です。

 

私には中学入学当初からの親友がいました。

彼女の名前はE。

 

互いの家に行き来していたし、しょっちゅう他愛のない話で笑い合っていました。

 

Eのお母さんは専業主婦だったのか遊びに行くと、私たちの話に加わり、一緒によく笑ってたし、優しい味わいのお菓子や食事を出してくれてました。

 

しかし、2年生になるとクラスが変わり、行き来も少なくなっていきました。

 

ある夏休みの登校日。

 

暑さにぼうっとした頭で、廊下を眺めていた私の脳裏に、いきなり

『Eのお母さん』

『死んだ』

という巨大な文字が浮かびました。

 

不吉きわまりない言葉にうろたえ、私は普段寄り付きもしない職員室に駆け込み、Eの担任につかみ掛かる勢いで尋ねました。

 

「先生!Eのお母さん亡くなったんですか?!」

半狂乱な私を訳が分からないといった風情で、うちのクラス担任が宥めます。

引き離され、教室に戻りなさいと諭す担任の言葉に重なるように、Eの担任の言葉が耳に入ってきました。

「何で知ってるんだ…?たった今連絡貰ったばかりなのに………」

 

うちの担任は、Eと私が親友だと知っていたので、あらかじめ、危篤の知らせを受けてたのだろうと納得したようですが、もちろん、私は何も知りませんでした。

 

親友のお母さんが、命に関わる病気を抱えていたなんて………。

 

葬儀の日、Eのやつれきった表情は痛々しく、正直見たくありませんでした。

しかし、彼女は私に気づくと、微かに笑顔を浮かべ、こう尋ねたのです。

 

「あのね、M(私)の描いてくれた絵、お母さんの柩に入れてあげていい?」

 

それは、かつて絵の道に進みたいと打ち明けたせいで家族と大喧嘩になり、Eのお母さんに相談した際

『おばちゃんには、何も言えないけど…おばちゃんはMちゃんの絵、とっても好きよ。おばちゃん、実は塗り絵が大好きなのよね。Mちゃんが塗り絵作ってくれたら嬉しいな』

そういわれ、中学生の子供なりに懸命に描いた拙い絵に、綺麗な着色がされたものでした………。

 

涙がとまりませんでした。

 

自分の娘だけでなく、その親友にも、深い愛情を注いでくれた方だったんです。

 

初めて亡くしたものの大きさに気づきました。

もしかしたら、実の子のEより泣いていたかも知れません。

 

「あの子、なんで友達のお母さんが死んだからってあんなに泣くの?」

「偽善」

 

そんな陰口も叩かれました。

 

気になんてなりませんでした。

 

それは『親』という人たちの深い愛情を教えていただいた出来事でした。

 

 

Eとはその後学校も別れ、会うこともなくなりましたが、良い人と結婚し幸せでいると伝え聞きました。

 

私も今幸せと言えるでしょう。

 

人の想いの優しさ、ありがたさに気づける人間でありたいと思う今日この頃です。

 

駄文読んでいただきありがとうございました。

一切脚色していないので、判りづらかったら申し訳ありません。

怖い話投稿:ホラーテラー はにゃさん  

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