短編2
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夢か現か。

これは、私が小学生の頃のお話です。

もちろん、実体験です。

 

夏休みのその日、母の実家に遊びに行き、いとこたちと遊びまくって、その疲れからぐっすりと眠ってしまいました。

 

眠った場所は、お座敷。

 

座敷を囲むように廻り廊下があり、ちょっとしたひなたぼっこを楽しめる縁側があります。

 

縁側の外は、広い裏庭があり、川の横に建てられたその家の勝手口には、直接川原に降りられる、石の階段がありました。

 

いつしか私は夢を見ていました。

 

顔は見えない、青いズボンの男の子が

『遊びに行こうよ!』

と、しきりに誘いかけます。

 

当時アニメで見たばかりの“ピノキオ”の姿に良く似ていたその子について行きかけたのですが、不意に

『遊びに行く時は、必ずどこに行くのか、何時に帰るのか言ってから行きなさい』

と、いつも口をすっぱくして言う母の言葉を思い出しました。

 

手を伸ばし、ついて行きかけた私は、男の子に

『ちょっと待ってて!お母さんに言ってからじゃないと遊びにいけないから』

と言うと

『大丈夫だよ。すぐ近くだから』

としきりに急かします。

 

何となく、不思議に思いながらも

『でも…言っとかないと、お母さん、怒ると怖いんだもん。すぐ戻るから待っててよ!』

頭の中は、早くお母さんにお許しもらって、男の子と何して遊ぼうかな?というウキウキした気持ちでいっぱいでした。

 

だけど男の子は、不意に冷たい声になり

『じゃあ、君とは遊べないよ。バイバイ。』

と後ろに下がります。

 

ピノキオに嫌われちゃった!と悲しくなり追い掛けようとしたのに、あっという間に彼は居なくなりました。

 

目覚めた私は、下半身座敷、上半身廊下という、恐らく外に出ようとした恰好で倒れており、それを見つけたおば達や家族みんなに、寝相が悪いと散々からかわれました。

 

後日。

その家の裏の川から、男の子の遺体が見つかりました。

カニを捕りに川に入り、流されて、行方不明になっていた子でした。

青いズボンを穿いていたそうです。

川の生き物達に突かれ、顔は判別つかないほど崩れており、服装でその子だと判ったそうです。

 

それで、思い出しました。

 

あの夢の男の子は、顔が見えないのではなく“無かった”のだと。

喋る時も、口があるはずの場所に何もないので、声だけが脳裏に響いていたことに…。

 

私が倒れていた廊下の外…裏庭の行きつく先は、実は2〜3メートル程の高さの崖になっており、当時は柵もなく、真下は川だったんです。

 

あのまま外に真っすぐ出て行っていたら………。

 

ゾッとすると同時に悲しくなった出来事でした。

 

そして、いつも厳しく言い聞かせてくれてた母に心底感謝しました。

 

あれがなければ、ついて行ってましたから。

怖い話投稿:ホラーテラー はにゃさん  

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