短編2
  • 表示切替
  • 使い方

廃墟の住人

私が高校2年だった時の話です。

車窓の外を青々と生い茂る木々が横切っていく。

祖父母の家まであと少し。

私は久しぶりに父の実家を訪れるため、胸を高ぶらせていた。

祖父は牧場を経営しており、私はその手伝いをするのがたまらなく好きだった。

到着すると、私はまず玄関の目の前の庭に置かれた、祖父母の飼い犬、ムッシュの犬小屋に駆け寄った。

ムッシュは私の足音を聞き付けたのか、

ワンッワンッ

と吠えながら小屋から走り寄ってきた。

相変わらずムッシュは私にかなり懐いている。

すると玄関の扉が開き、奥から祖母が出てきた。

私達家族は家の中へ通された。

これから一週間、私はこの家で過ごすことになっている。

四日目の昼頃、私は父と家の外を散歩することになった。

天気が良いため、風が心地良く感じられた。

周りは、青空を突き刺すように立ちはだかる山々が続いている。

少し歩き、祖父母の家のある集落を抜けると、歩道は無くなり、青々と生い茂る木々の間を縫うように舗装された道路にさしかかった。

街灯などあるはずもなく、その道は夜になると車のライト無しには通れなくなる。

父は子供の頃毎日のようにこの道を二時間かけて歩いて登校していたらしく、その話を聞いた時にはさすがに度肝を抜かれた。

父からすると、ここ一帯の山道は庭同様らしく、ありとあらゆる場所に先導された。

絶景の見える丘、轟く大滝、大蛇の住家と伝えられる谷など、都会育ちの私からするとどれを取っても新鮮で、興味をそそられた。

大蛇の谷を後にし、しばらく歩いていると父が口を開いた。

「俺が昔新聞配達に行ってた集落寄ってみるか。今は誰もいなくて無人の廃墟なんだが・・・・どうだ?」

「行きてー!」

私に断る理由など無かった。

この後その廃墟であのような奇怪な出来事に遭遇するとは、その時の私はまるで考えてすらいなかった。

怖い話投稿:ホラーテラー ガリガリガリクソンさん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ