中編7
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部屋探し……

特に独立願望は強くはなかったのですが、20歳で父親を病気で亡くしてから結婚するまでの10年ほど独り暮らしをしていました。

霊感体質の私が部屋探しをするとどうなるかというお話です………

そこは東京都内の下町、江〇川区を通る都営地下鉄の沿線。

一応駅名は伏せますが、その区内にある駅はわずかに5駅(笑)。

地元でそこそこ有名な不動産屋(カタカナ名前でした)に紹介をされていくつかの物件を見て回りました。

その部屋は〇〇駅前から徒歩1分という所にある割には家賃が手頃 (かといって激安物件というほどでもない) でした。

1ルームの狭い間取りでしたが、まぁ独り暮らしですし、何より駅から近い所が気に入りました。

契約成立の手応えがあったのでしょう。立ち会いの不動産屋さんも談笑しながら、何気なく押し入れを開いたところ………

小学校3~4年生くらいの無表情でうつろな瞳をした男の子が体育座りをしてソコに佇んでいました…………。

「あっ!!」っと絶句した様子から、不動産屋さんにもハッキリと見えたようです。

人間不思議なもので、ああいう時って、とっさに扉を閉めるものなんですね(笑)。

二人で顔を見合せながら、次に扉をあける勇気はありません。しかし確認しない訳にもいかないので、恐る恐る扉を開けてみると………

モチロン子供なんていません。ありがちなソレを連想させるような残留物 (まぁ、お札とか、濡れた床とか…) もありませんでした。

私はそれで安心したんですが、不動産屋さんがふさぎこんじゃって……

どうも初めてだったみたいですね………。

見えちゃったの…………

その後、私がその部屋を借りると言ったので、ひどくビックリしていました。

結局その部屋には4年住みました。

4年の間に二度ほどドキっとするように体験をしましたが、その少年には一度も会うことはありませんでした。

駅から近いという理由で契約したその部屋、実はもうひとつ気にいった理由がありました。

それはトイレと風呂場が別々だったこと。よくワンルームのアパートなんかでありますよね、風呂場の中にトイレもある部屋…、 あれ嫌いなんですよ(笑)

でも、そこまでこだわった割には住んでいる4年間の間に風呂場に立ち入った事は数えるほどしかありませんでした。

何故なら自宅の前にある駅前のスポーツジムに通っていたため、そこのシャワーを使ってから帰宅するのが日課になっていたからです。 いよいよ住んでいた駅が特定できちゃいますね(苦笑)

みなさん、感じることあるでしょうか?見えないまでも何となく空気が重たいというか、密度が濃いというか、空気が淀んでいるカンジ………

ウチの風呂場がまさにそんな場所でした……………

男の独り暮らしなので、当然掃除は行き届きません。特に使っていない風呂場なんかは結構、掃除しないまま放置したりしていましたが、私の性格的なものなのか、何ヶ月かに一遍、突然思い出したように家中の大掃除をするんです、丸一日かけて(笑)。

ホコリのうっすら積もった風呂場の床に、明らかに自分より小さい足跡がいっぱい………

よく不思議がられるんですが、見えちゃったりしたらどうするのか? 念仏? お札? お塩?

とくに何もしないですねぇ…。

その時も「あ~、やっぱり…」というカンジで掃除を続けました。

一緒に猫と思われる足跡を見つけて和んだりして…。

モチロン猫なんか飼ってないし、基本ペット禁止のアパートなんですけどね(笑)。

さて、このアパート、比較的狭い面積の中で建てられているので、各階に2部屋しかありませんでした。 私が契約した4階には私のほかに、姉妹が二人で暮らしているようでした。

姉がOL風、妹が女子大生風…、ということは401号室はウチより一部屋多いのかなぁなんて思っていました………。

割と姉のほうとエレベーターの中で一緒になったり、部屋の前の踊り場で一緒になったりするので、挨拶を交わしたりして、そのうち顔見知りというか親しくなりました。

特に姉のほうは活発なカンジで好みのタイプでしたし、私も若かったですからねぇ…

ある日、部屋に遊びに行くことになったんです。 といっても隣なんですけど……

入って見ると部屋の間取りはウチとほぼ一緒、色んなものの左右が逆になっているだけ………

気になっていることをさりげなく尋ねました。

「妹さん、いるよねぇ?」

「えっ?なんで知ってるの? 四国に住んでいて一回もココに来たことないのに…」

「………………????………………」

何度も、妹(と思っていた女)が、鍵を開けて家に入っていったり、家から出てくる所を見てるんですけど…………

でも、つとめて気にするまいと思い、楽しく談笑しながら、そのうちいい雰囲気になっていったんです

………でも…………、

「あなた、彼女いるじゃん」と言われました。

「髪の長い女の人が鍵をあけて部屋に入っていったり、部屋から出てくるところ、私何度も見てるよ」

「………………????………………」

モチロンそんな事実はないんですけどねぇ?

お互い、特徴を話していったらどうも同じ女っぽいんですよ………。

髪が長く、色白で、スリムな体型、特に違和感を感じたことがなかったので、毎回同じ服装だったはずはないと思うんですけど、白っぽいワンピース………

挨拶をすると、無言で会釈ををするところまで一緒……

私も彼女も、単に内気な人なんだと思ってました………………………

でも部屋の前で何度も会っているのに、一緒にエレベーターに乗った記憶がないんですよね。

今思えばそれも不自然な話しですけど………

そんなある日、(多分お隣さんと話をした3~4日後くらい)ジムから家に帰ってきて、まず施錠。

多少神経質になっていましたので、普段は掛けないチェーンロックをしたのを覚えてます。

カバンをテーブルにおいた時に、居間の後ろの扉が勢いよくガラッと開きました。

音もなく…なんていうとありがちなシチュエーションでもっと怖いんでしょうけど、ホント勢いよくガラッと開いたんです…、 モチロン家の中には私以外いません。

それはそれでドキッとするものです……………

実は、この話しには珍しくオチがあります。いやオチというか連続性があるというか、後日、白っぽいワンピースの髪の長い女と部屋の中で対峙することになりました………

私、子供のころから偏頭痛持ちなんです。

多分、霊的なものとは関係がないと思うんですけど……。

その日も昼頃から痛み出して、もうなにもヤル気がおこらず、ベッドに横になっていました。

家にいたんですから、多分土曜日か日曜日、朝から雨が降っていたと記憶しています。

まだ明るかったので左手を目の上において、顔を隠すようなカンジ(伝わりますかねぇ…)で寝ていました。 大抵寝ると治るんですよ、偏頭痛…。

どれくらい寝てたでしょうか…、 覚醒したんですが身体を起こすことが出来ません。

「これって、金縛り……??」

私は過去に金縛りにあったことがなく、その後も一度も経験がないので、金縛りがどういうものなのか今イチよく分かっていません。この時の感じとしては、重たく淀んだ空気が身体を包んだようなカンジ…、身体が動かないというより極端に重くて動かしづらいというカンジです。ようするに動かそうと思えば動かないことはないけれど……………

これって金縛りですか?

怖いという感じはありませんでした。動かないことへのあせりがあるだけです。

ベッドになにかが乗ってきました。

当然のことながら、部屋には私一人ですし、あの日以来施錠はきちんとしてあります。

目を隠していましたが、安物のパイプベッドが

「ギシッ、ギシッ…」ときしんでいましたし、

なにより人間が一人乗ってきたと思われるベッドのへこみがはっきりと感じ取れました…………

その人(?)、ちょうど私の顔の上で仁王立ちをしているカンジで立ち止まりました。

両方の耳のあたりが足跡のようにへこんでいる感じでそれがわかります………

壁掛け時計の音がやけに耳に残っています。

身体が動きません………

何故か、突然闘志がわきたてられて

「絶対にこの腕をどかして見てやるっ!」

と思ったんです。 なんでか分からないんですけど…………。

まさに歯を食いしばって、左手に力を込めてバッと動かすことに成功しました。

髪の長い、色白で白いワンピースをきた女が私を見下ろしていました………

私がお隣さんの妹と思っていたその女とそのまま数分、見つめ合いです。

壁掛け時計の音がやけに耳に残っています。

まばたきをしました。(というより見つめ合っている間、まばたきをしていなかったのかどうかの記憶が定かではありません)

その瞬間、目の前にいたはずの白い女は消えていました。

しかしベッドのへこみは残っています…………

次第にベッドのへこみが消えていき、あとに残ったのは耳鳴り…………

まあ、今冷静に考えれば、パンツが見えていたはずなんですが、惜しいことをしました(笑)

原因は不明ですが、数日後お隣さんが引っ越して行きました……

怖い話投稿:ホラーテラー 今は40代…さん  

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