短編1
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すれ違いざま

二年前の話です。

俺は人よりも少しだけ、その存在を感じる事がありますが、あれほどはっきりと見えたのは初めてでした。

その日は雨が降っていました。

いつも通りのバス停で降りて、いつも通りのコンビニに寄り、いつもの様に帰宅するはずでした。

しかしコンビニに向かう細い道で、違和感を覚えたのがこの体験の始まりでした。

「近くにいる…」そう思いながら足を早めました。

目深に差した傘の下から、男の足がみえたので何気なく傘をあげ、その人を見ると、グレーのスーツで傘を差さず、俺に背中を向けて立っていました。

「何をしてるんだ?」と思いながら、その人とすれ違いかけた時、スーツの男は頭だけを真後ろにひねり、俺の方をみました。

「ヤバい!目が合った…」

その瞬間、やっとその人が違和感の正体だと気付きました。

しかしもう遅く、案の定ソレは俺の後ろをついて来ました。

俺はさらに足を早めて、コンビニに逃げ込みました。

雑誌の整理をしていた顔馴染みの店員さんに、「いらっしゃーい」と声をかけられ振り返ると、ガラス越しにその店員さんの前でスーツの男は真っ直ぐ俺の方を見ていました。

二十分ほどで雨があがると、スーツの男も消えていきました。

その日以来、雨の日は違う道で帰宅しています。

長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー エリオさん  

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