短編2
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不可解な出来事

あの日私は、仕事が忙しく、いつも乗っているバスに間に合わなかった。

1時間に一度しかこないバス。

そんな田舎に住んでいた私は、村の外れにある診療所に勤務していた。

毎日毎日、お年寄り達が意味もなく、ただ皆で楽しく過ごす毎日だった。

たまに子供が転けて怪我をしたり、お年寄りが風邪で熱を出したりするくらいだ。

そんなある日、夜9時を回り、診療所を後にし、バス停に向かって歩いていると、前から女の人が歩いてくる。

遠くから見ても、女の人は凄く大きく見えた。

段々距離が縮まっていく。

見たことも無い人だった。

身長が大体1㍍80ぐらい、細長い顔に、キツい狐の様な目、髪の毛はショート、綺麗な紫色の着物を着ていた。

私は何故か目が合わせられなかった。

何故かと言うと、歩く動作がどうも普通と違う。

ロボットが歩くような歩き方をしていて、何故か足音がまるで聞こえない。

田舎道で私と、その人二人だけなのに…。

距離が近づくにつれ、私の心臓の鼓動が早くなっていく。

足の指から来る鳥肌。

そしてすれ違う瞬間、私の心臓は破裂しそうだった。

何事も無かったように、すれ違う私。

女の人も、普通に横を通り過ぎていった。

そのまま怖くて振りかえれず、100㍍くらい下を向いて歩いていた。

何事も無かった為か、極度の安堵感に駆られていた。

もう居ないだろうと振り返った時、私は安堵感は恐怖感に変わった。

何故か10㍍ぐらい後ろに、さっきの女がこちらを向いて立っている。

首を斜めに傾けては、カクッと反対に傾ける。

その動作を繰り返している。

私はどうしていいか分からなくなり、取り敢えず早歩きで逃げた。

後ろを振り向く事さえ出来ない。

足音が聞こえないから、付いてきている事さえ分からない。

恐怖で涙していた私。

足も思うように動かない。

ガシっっっ!!

肩を捕まれた。

振り切ろうと思っても、力が強く無理だった。

ゆっくりと振り向いた瞬間。

『通りゃんせ通りゃんせ、ここは何処の細道じゃ、天神様の細道じゃ、ちっと通して下しゃんせ、御用の無いもの通しゃせぬ、この子の七つのお祝いに、お礼を納めに参ります、行きはよいよい帰りは怖い、怖いながらも通りゃんせ通りゃんせ。』

この歌を、唄っていた。

悲しげな顔で、か細い高い声で…。

私は歌が終わるまで聞かされていた。

歌が終わった。

女が口を歪まして言った。

あなた、生きている意味…あるんですか?

その瞬間気を失った。

気が付いたら、バス停の前にいた、雨が降っていたのか、びしょ濡れだった。

その日以降何も無かったが、私は直ぐに転勤要望を出し、今違う場所で診療所をやっている。

あの日以来、私はまたあの女が現れるか、毎日ビクビク暮らしている。

一体なんだったんだろうか。何が言いたかったんだろうか。

怖い話投稿:ホラーテラー チョコボール中井さん  

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