中編3
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横で彼女が騒いでます。

オイラの彼女が勤めていた職場での話し。

彼女は東京都内のある育毛会社に勤務しておりました。

閉店後、休憩室で彼女を含む、店長、チーフ、同僚2人の計5人でお菓子などをつまみながら喋っていたそうです。

「ピンポン」

その時、店の入口にある来客を告げるチャイムが鳴りました。

閉店後です。完全予約制なのでお客さんが来るとは考えにくい。同僚達は顔を見合わせて怪訝な表情をしていました。

しかし、彼女は閉店業務で入口のシャッターを閉めています。その事を皆に告げると、

「マジ? それってやばくない?」

と、同時に、

「ドタッ ドタッ」

休憩室に向かって大股で歩いて来る足音が聞こえてきました。

皆に緊張が走りましたが足音は休憩室を通りすぎ、2メートル程過ぎたあたりで止まったようです。

職業柄、仕事場の従業員はほぼ女性です。それに対してお客さんは100%男性です。

「やっぱりさ、安くないお金を出してまでこういう店に通ってくる男って毛髪にかなりコンプレックスがあるんだよね。

必然的にどこか内向的な人が多い。これまた必然的に女性の経験値が低い人が多い気がするんだよね。

自分のコンプレックスをさらけ出して、それに対して優しく女性が接するじゃない。 従業員に対して恋心を抱く人も結構いるんだよね。その気持ちが歪んだ形で表れちゃう人も中には居てさ、ストーキングマンに変身しちゃう輩もいるのよ。」

(彼女談)

かなり偏見が入ってますが、彼女達はお店のお客さんに対して軽く警戒心を抱いている部分もあるようです。

閉店後に声も掛けず、閉まっているシャッターをかい潜って店内に侵入してきた人間を警戒しない訳がありません。

彼女達は意を決し、それぞれ武器を忍ばせて扉を開けてみると皆息を飲みました。

扉のすぐ目の前にスーツを着た小柄な男がこちらに向いて立っていました。彼女達が扉を開けるのを待っていたかのように。

彼女達は飛びのき、その男が普通じゃないのが直ぐに分かったそうです。

悲しそうな表情で佇むその身体は後ろのカレンダーが透けて見えていたそうで、

「ぎゃ〜」

と、休憩室はパニック状態。それぞれ手にしていた武器の鋏、ほうき等を投げ付けたらしいですが、身体をすり抜けてしまったらしいです。同僚は警察に幽霊が出たと電話。

20秒程したら「ス〜ッ」と消えてしまったらしい

彼女達も直ぐに冷静さを取り戻し、

「見た?完全に幽霊だよね? 目の前で消えたよ!!」

「マジやばいよ〜!! ハンパねぇ!!」

と大盛り上がり。

そこで店長が、

「あの男、完全にズラだったでしょ。」

チーフが、

「なんか激しくズレてたよね。前後ろ逆かってくらい。」

他の3人は全くズラには気づかなかったらしい。

ズラ話しに盛り上がる店長、チーフを見て、

「流石だな…」

と彼女は感心したらしい。

やはりここは塩を撒いとくか。という事になり男が立っていた辺りに塩を撒いた後、何を思ったのか店長が良く効くとされている育毛剤を

「悪霊退散、悪霊退散」

と呟きなが撒いていたらしいです。

それを見た彼女はやはり、

「流石だ…」

と感心したそうです。

塩が効いたのか、育毛剤が効いたのか定かではないが、坊主も霊媒師も呼ぶまでもなくその後、男が出ることは無かったみたい。

警察は苦笑い、また何かあったら連絡して下さいだって。

怖い話投稿:ホラーテラー タヌキングさん  

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