中編4
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鬱病と恐怖心

いわゆるホラー系の話ではありませんので、そういうのを期待されている方はごめんなさい。

鬱病が悪化した末に会社を退職してぶらぶらしていた頃の話です。

特に何もすることがないし、敢えて何かする気力もなく

万年床に横たわって、布団脇に置いてあったアナログ時計の長針をボーッと見ていました。

それまで気にも留めたこともなかったのですが、

眺めている内に、非常に遅い速度ですが、長針の動く様子がだんだん判るようになってきました。

次に短針を眺めました。

さすがに無理だろうと内心思いながらも、時間が有り余るほどあったので

虚脱状態になってひさすらボーッと眺めましたが、やはり動いている事は認識できませんでした。

ただ、それに目が慣れてきたのか、長針の動く速度は注意深く見なくてもすぐ判る程度になりました。

こんな事をしている内に、いつの間にか夜0時を過ぎていました。

さすがに喉が渇いてきたので、とりあえず近所のコンビニまでジュースを買いに行こうと外に出ました。

元々、自炊をしない生活なので、冷蔵庫も調理器具もなく、食器はたぶん探せばどこかにあるんでしょうが、

外食とコンビニ食ばかり続けているせいで、引っ越しの時に梱包の段ボールに入れたまま未だに放置状態です。

外に出ると、0時過ぎたのに、まだ通行人が何人も歩いて、車が走っていました。

こんな精神状態の自分から見ると、それらはただの動く物体であり、目障りな障害物でもあり、

雑音を発しているように感じます。

世界が勝手に回っていて、自分だけが取り残されているようにすら感じました。

コンビニに入り、ジュースを買うついでにだらだらと雑誌をパラパラ眺めましたが、

集中力が致命的に欠けている精神状態なので、ほとんど頭に入ってきません。

コミックも読みましたが、ストーリーが全然把握できず、絵と吹き出しを断片的に眺めて

文字通り、時間潰しの足しにしかならない状態でした。

いつの間にかワンルームマンションに帰宅していました。

たぶんコンビニを出て歩いてきたと思うのですが、またボーッとしていたので断片的にしか覚えていません。

しょっちゅう服用を忘れる抗鬱剤を飲んで、水道の水を飲みました。

そういえばジュース買いに行ったんだなと思いましたが、見事に忘れており、面倒臭いのでまた布団に横になりました。

もう5ヶ月くらいこうしていましたが、実家の両親には求職中で色々忙しいと嘘を付いて、

生活費の仕送りと、それプラス家賃の支払いも肩代わりして貰って生活を続けていました。

今思うと、自分が無気力そのもので、仕事探す気もなさそうだと親も気付いていたと思います。

鬱病に加えて慢性頭痛持ちでもあったので、布団に横たわっている内に首筋が凝ってきてだんだん頭痛がしてきましたが、

鎮痛剤を飲んで、効くまでの間、今度は横にならずに壁により掛かってまたボーッとしていました。

今度は照明を消して、じっと時間が過ぎ去るのを待ちました。

何もすることがないと、時間と戯れる行為もそれなりに面白いものです。

遮光カーテンと雨戸を閉め切っているので、室内は真っ暗ですが、

暗闇だと、自分の想像したものが何となく目の前に見えてくるような気がしました。

自分が想像する事の多いのは、水に絵の具を垂らした時の、あの混ざる途中のような状態。

透明な水の中に、まるで煙のように淡い色が次第に混じっていき、やがて水と一体化するあの過程です。

想像の中では、主に白と黄色が出てきます。

闇の中に煙のように色がゆらゆらと浮かんできて、そしてまた闇の中に消えていく、

そんな儚い状態が何となく好きなんです。

たまに嫌な記憶が蘇ったりします。

学生時代、そして社会人になっても、自分の性格に問題があって社会とうまくやっていけず

色々と嫌な思いをしてきました。

意識の底からそういう記憶が突然浮かんで来ると、ストレスに耐えきれずに

裏声で「フーーーーーーーーーー!!ヒューーーーーーーーーーー!!」と叫びます。

体をビクッと数回痙攣させ、首をブルブル左右に振るわせている内に、数秒程度でストレスが許容量に収まってきます。

嫌な記憶の種類と体調、自分の気分次第でこれには色んなパターンがあり、

髪をひたすら掻きむしったり、顔面をガリガリ掻いたりなどがありましたが、それを思い出そうとすると

また嫌な記憶が蘇ってきそうなので割愛します。

一体、自分は何のために生きているのか…人生は死ぬまで延々と続く拷問なのか…

当時は考え方がどんどんネガティブな方向に行っていました。

近所の墓地やお寺を深夜にうろついて、疲れて墓地の中で座り込んでボーッとしたりとか、

深夜に電灯も人気も殆どない河原で、木の下に座り込んで遠くを虚ろな目で眺めていたりとか

今思うと、とても怖くてできない場所や時間帯も、当時の精神状態だとあまり意識していませんでした。

無精髭と寝癖の酷い格好で、パジャマ姿のままサンダル履きで深夜に近所を徘徊したり

あまり人目が気にならなくなっていました。

そのままの格好でコンビニも行っていました。

もしかすると、恐怖を受け止めるのってそれなりに気力を使う感情なのかもしれません。

今の自分は、中途で別な会社に入るまでに回復しましたが、

元々臆病なタイプなので、とてもじゃないですが夜に墓地やお寺なんかに一人じゃ行けませんし、

部屋の照明も付けっぱなしで寝ています。

人間って、その時の気分次第でかなり変わるもんなんですね。

怖い話投稿:ホラーテラー 臆病な私さん  

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