彼女が病で倒れた。
医者から余命が三ヶ月と言われて、目の前が真っ暗になった。
俺は当の本人より泣いた。
毎日、見舞いに行って最後の時まで一緒に居ようと約束した。
見舞いに行くと、彼女は必ず同じ事を言う。
忘れないで。
私を忘れて、他の人と幸せになってと言えない、嫌な女でごめんね。
俺は当たり前だと言いながら、必死に笑顔見せる。
悲しかったが、幸せな時。少しでも長く生きていてくれと願った。
医者が告げた三ヶ月が過ぎた。
彼女は機械に繋がれて喋るのも困難になっていた。
息も絶え絶えに、彼女はいつもと違う事を口にした。
本当に私は嫌な女。
貴方に忘れられない為に頑張ってる。
死んだ後まで縛る事になると思うけど、ごめんね。
俺は泣きながら、彼女を抱き締めた。
それから一ヶ月後、彼女は死んだ。
悲しくて悲しくて、泣く事しか出来なかった。
そして俺の誕生日は、彼女の命日にもなった。
泣いている俺に彼女の両親は手紙をくれた。
その手紙は、自分が死んだ後に渡してくれと頼まれた物だった。
手紙にはの内容は…
わざとあなたの誕生日に死んだりして、ごめんなさい。
どうしても、忘れられたくなかったの。
優しいあなたは誕生日が来る度に、思い出して泣いちゃうね。
でも、泣き顔は見たくないよ。
だから誕生日には必ず雨を降らせて、解らないようにしてあげる。
最後まで勝手で最悪な私でごめんね。
雨なんかどうでもいい。
そんな事が出来るなら、生き返ってくれ。
手紙を抱き締め、声を上げながら泣き続けた。
一年後…
俺の誕生日と彼女の命日。
毎日、悲しかったが出来るだけ涙を我慢しながらやってきた。
でも、やっぱり今日は無理だった。
涙が頬を伝う。
そして彼女の手紙にあった通り、涙を隠すように降り出した。
雪が……
俺の誕生日は十二月。
少し抜けた所があったなと思い出して、雪では隠しきれないぐらいの涙と笑顔が浮かんだ。
墓前で何を言ってやろうか考えながら墓参りに向かった。
怖い話投稿:ホラーテラー keyさん
作者怖話