短編2
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恋情

寂しそうに笑うその顔は何か言いたいのだろうか?

何も言わず私を見つめるだけ。

携帯のアラームで目を覚ました私は携帯を見ながら考えていた。

同じ夢をみるようになってどれ位経つだろう?

そういえば最近は車ですれ違う事もないなぁ……

私は仕事に行く支度をしながら考えていた。

もう別れて10年以上も経つその人は最近私の夢に出てくる。

私から別れを切り出したのだが彼は笑顔で受け入れてくれた。

「何かあったらいつでも飛んでいくから連絡しろよ」

そう言って彼は笑った。

本当に良い人だった。

でも私は違う人を愛してしまった。

良心が痛んだ。

でもそれ以上に私は違う恋に燃えていた。

すっかり彼のことも忘れかけていた。

親友の早紀が家に遊びに来た。

早紀とは学生時代からの付き合い。

お互い知らないことはない位知った仲なのだ。

早紀のお土産のタルトを食べながら私たちはたわいのない話に盛り上がっていた。

「そういえば、アキラ君自殺したらしいよ」

唐突にさらりと早紀は言った。

私は持っていたカップを放してしまった。

「何で?いつ?」

私は早紀に訊いた。

早紀は私が落としたコーヒーを拭きながら

「私も詳しくは分からないけど3ヶ月位前みたいよ」

「何で早紀は知ってるの?」

「この間、偶然に高校の時の真弓先輩に逢ってね。

真弓先輩とアキラ君の家

近かったじゃない?

それで私も知ったのよ。

あんたに言うかどうか迷ったけど、もう10年以上昔の事だし…教えないのもあんたに悪いかな!?と思って」

早紀は新しいコーヒーをいれてくれた。

アキラ君は仕事の事で悩んでいたらしい。

首を吊っての自殺。

私は早紀が帰った後も暫く動けずボーっとしていた。

死んだ事を分かって欲しくって夢に出てきたの?

それとも他に何か理由があるの?

ねぇー何で死んじゃったの?

私は段々悔しくなり泣いていた。

一人で子供のように声を出して泣いていた。

「ごめん…」

振り返るとアキラ君が立っていた。

「俺…本当にお前のことが好きだった。

幸せにしたかった。

でも、もう俺はお前に何もしてやれない。

ごめん。

元気でな」

そう言うと消えた。

私は窓から見える夕日を見ながら明日アキラ君のお墓参りに行こうと思っていた。

怖い話投稿:ホラーテラー ナナさん  

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