中編3
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ゲシュタルト崩壊

家に姿見のような大きめの鏡がある方は一度試して貰いたい

鏡に映った自分を見ながら

『お前は誰だ』

と言ってみてください

いえ、お化けとか幽霊だとかそういう類のモノでは無いんです

鏡に映った自分の眼を見ながら『お前は誰だ』と言ってみてください

何か不安感というか、奇妙な感覚に囚われるかと思います

大戦中ナチスがユダヤ人に行なった実験に人格をコントロールするという名目で一日数回被験者を鏡の前に立たせて、鏡の向こうの自分に『お前は誰だ』と話しかけ精神の変化を観察記録していったそうな。

実験開始後10日間経過したころには異変がみられ始めた。

判断力が鈍り物事が正確に把握できなくなり3ヶ月経った頃にはすっかり自我崩壊し「自分が誰だか分からなく」なって狂ってしまった。

当事、好奇心旺盛だった友人(以下A)と僕は「ウソくせー試しにやってみようぜ」という事になった

その日、自宅の姿見の自分に向かって「お前は~」とやってみた

夜中、閉めきった部屋だったので不気味極まりないのですがテンション上がってたので怖くは無かったです

しかしすぐに 気分が悪くなり 吐き気を催しやっぱヤバいなと思って私はやめた。

次の日

友人Aに怖くてちょっとしか出来なかった旨を言うと「うわ、ダッセーあんなもん怖くもなんもねぇよ」と子馬鹿にされました。

そして二人の間でこの話題はここで終わったのです。

しばらく経って鏡の話など忘れてしまった頃、

Aがしばしば学校を休むようになった。

登校している時に何かあったのかと聞いてみたが

「ん.. 何でもない」と、どこか上の空のような感じでした

それから数日後……

夜中急にAから電話がかかってきた。そして受話するや否やいきなりAが

『俺ってオレだよな? 俺って、XXX(Aの本名)だよな?』と変な事を聞いてきた

『な?な?』って今にも泣きそうな声で聞いてきた

僕が「何おかしな事言ってんだよ、お前はXXXだろ」と答えてやると

『そっか...そう だよな。』

とAは少し落ち着いた様子でこう続けた

『実はさ、あの後も何度か鏡に向かってやってたんだ。いや、別にナルシストなわけじゃないんだけども鏡の自分に話し掛けてると不思議と気分が良かったんだ』

『何かどんどん自分が自分じゃ無くなっていく感覚が気持ちいいんだ』

おいおいヤバいだろそれは...

私はすぐに止めるようにAに言ったのですが、

『いいんだ、 いや、大丈夫だから、これでいいんだだいじょうぶ、いやコレで良いんだ』

と壊れたオーディオみたいに繰り返し、私が「おい!」と言った瞬間電話を切ってしまった。

心配になってもう一度電話をかけてみたがなかなか出ない。

12回コールしたところでやっと出たAは一言こう言った。

『お前..誰だ?』

すぐに断線しそれから二度と電話は繋がらなかった。

そしてAは全く学校に姿を見せなくなった

後日

全く連絡のつかないのを不安に思ったAの親がAの下宿先に行ったんだが

Aの奴すっかり頭が狂ってて、親の顔も認識できなくなってて

唖然とする両親を尻目にヘラヘラ笑いながら洗面所の鏡に向かってずっと話し掛けてたそうな

勿論、鏡に映った自分とである。

その後Aは実家に連れ戻され地方の病院に入院したので詳しいことは分かりませんが

人づてに聞いた話によると既に手遅れで取り返しがつかなかったそうだ。

今では…

両親にも飛散し一家で話しているらしい……

それぞれ鏡に向かって……

私もまさか、短時間であんなにおかしくなるのとは思わなかったんですが…

鏡の実験には続きがあってある被験者を普通の鏡だけでなく合わせ鏡で行なったところ、通常の倍の速度で精神が崩壊したそうです。

ええ、

ありましたよ。

Aの家には大きな合わせ鏡が…

俺の家にも…

えっ?

俺?

誰だっけ…

ハハハハハ…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名係長さん  

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