短編2
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霊について考える

霊は本当に存在するか。

人の脳が、過去の体験や知識として得たイメージから勝手に造り上げた創造(想像)物なのだろうか。

霊に限らず、今私達が見ている、または見えている物は、脳が視覚から得た情報を頭の中で映像化しているに過ぎず、極論すれば、この世の全てが、脳が造り上げた創造(想像)物だと言えなくもないと思う。

鏡に映った自分は友人にも同じ姿に見えているのか、空の青は、山の緑は、あの子の笑顔は、みんな同じように頭の中で変換されているのか。

前述の理屈からすると、視覚以外の感覚についても同じ事が言える。

今目の前に広がる世界は、自分の脳が造り出した自分だけの世界なのかもしれない。

話を霊に戻そう。

最近、私の住むアパートの住民が行方不明になった。彼が消える少し前に、私は彼が2人組の男に無理やり車に押し込められ、夜の闇に吸い込まれていくところを目撃してしまった。

その時、多分、私の姿も向こうから見られていた。

数日後、私の元に車の男が。

穏やかな口調で、一緒に来ないと痛い事するよ、みたいなこと言うんで私は訳の分からない覚悟を決めて男の車に乗り込んだ。

すると、まだいた。

車の中に彼が。

と同時に奇妙な感覚に襲われた。

何といったらいいか、今まで見た事の無い色、感触、だが全体のディテールというか、そこは車の中その物。ビックリして隣の彼を見ると、人の形をしていない。

それでも彼と判るこの感覚。

私は思わず、(何なんだ!)と叫んだつもりだったが、自身の耳には

「〆£§∬¶!」

と聞いた事の無い言語が伝わってきた。

言うなれば、そこは正に異次元の世界。

そして彼もまた、異次元語で私に何やら話しかけてくる。

異次元語なのに意味が判る、この不思議な感覚。

〔見つけて下さい〕

直後私は気を失い、我に帰るとそこはまだ車の中だった。(但しこちらの世界)

男に窓の外を見る様促され、目を向けるとアパートの彼の靴が大きなズタ袋からはみ出しているのが見えた。

男は人差し指を口にあて茶封筒を差し出し、私はそれを受け取るしかなかった。

部屋まで送られ、何事も無かったように日常に戻る。

私は思う。

あの車の中の世界は、彼の見ていた、彼の脳内で造りだされた世界だったのではないのかと。

だとすれば今目の前に立っている彼は、私の脳内で造り上げた幽霊なのか?

私はもう一度霊について考えてみる必要があるが、あまり時間は無いようだ。

彼が少しずつ私の傍に…

怖い話投稿:ホラーテラー ジロウさん  

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