中編2
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Aさんの思い出

昔、看護師見習い(学校に通いながら病院で補佐的な仕事する)をしていた頃の事です。

入院患者さんにAさんというおじさんがいました。

内分泌と内臓が悪くて食事制限があり、当たり前ですが飲酒は超NGなのですが、

人の目を盗んでは病院を抜け出し、夜中の真っ暗なロビーで一杯やっちゃうような困った患者さんでした。

ある夜の当直の見回りの時、

またロビーに人影があるので、手にした懐中電灯を向けるとやっぱりAさんでした。

「Aさん、またですか!」

と声をかけると、

「おー 投稿者ちゃんか。いっしょにどうよ」と

あたりめを差し出してきました。

「これでも勤務中です! もー またお酒飲んで没収ですよ! ナースステーション連行します」

「そんな冷たい事いうなよーもうそんなに飲めないんだから見逃してくれよー」

「そう思うんだったら今は我慢してくださいよ。退院したらちょっとは飲めますよ」

「ちぇー 投稿者ちゃんは厳しいなあ」

Aさんと私は、隠れ飲酒を見つけるたびにこんな会話を繰り返していました。

Aさんは本当はもうお酒を飲むことが出来ない体で、

ちょっとの飲酒でも身体への負担は相当のはずでした。

状態としてはアル中だったんだと思います。

翌朝かならず「調子悪い」「背中痛い」というので、ベテラン看護師なんかはあきれ返っていたのを覚えています。

それから程なくして、Aさんは亡くなりました。

その日は勤務じゃなかったので、翌日に申し送りを受けてショックだったのを覚えています。

しかし、一人の患者さんの死をいつまでも悼んでいる暇は見習いにはなく、

いつのまにかAさんのことも思い出さなくなりました。

ある夜、また当直の見回りをしていた時です。

真っ暗なロビーにまた人影がありました。

当時、若い患者さんが抜け出していたりとか当たり前だったので、

また誰かいるよー全く・・・と、懐中電灯を向けました。

背中に見覚えがありました。

Aさんです。

「もーAさんまたー?」と声をかけて、違和感を覚えました。

あれ。Aさんは・・・

急に冷や汗が噴出してきました。

どうしたらいいんのか動けなくなっていると、

いつの間にか振り向いていたAさんがにっこり笑って、

「・・・投稿者ちゃん、元気でな がんばれよ」

と言ってすうーっと消えてしまいました。

Aさんはよく、退院したらおごってやるからなーなんて言ったりして、

結構かわいがってもらっていたと思います。

わざわざお別れを言いに来てくれたのでしょうか。

私は暫く涙が止まりませんでした。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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