(よろしければ「招かざる客1~8」をご覧下さい)
長女は携帯をいじりながら話を始めた。
長女「この前、体験したんだけどね。」
長女が話し出した―
私は通学に電車を使っていた。大学の近くでバイトをしていたため帰りの電車は22時前後に乗り込み、23時前後に帰宅する日々が続いていた。
その日はシフトの関係で20時過ぎくらいの電車に乗ることができた。
いつもと違う時間に乗る電車は、いつもと違う客層で、高校生の姿も見える。
○○駅に到着した。
この駅からは池が見える。池の水面に駅の電気が揺れる。
対面に座る高校生の間に池を見ていた。
「女が見てる……」
高校生の間に半透明の笑顔の女の逆さまの首だけが浮いていた。
自分が降りる駅まであと2駅。
池のある駅から私は目を閉じていた。
次の駅、対面に座る高校生逹は電車を降りる。薄く目を開けて顔をあげてみる。
無表情な女の逆さまの首。
ピピピピピーっと駅員が笛を鳴らしドアが閉まる。
クックックックックックッっと逆さの首が喉を鳴らし笑っている。短い間隔の笑い声。
自分の降りる駅に着く。逃げるように電車を出た。
駅から家までビクビクしながら住宅地を走る。
鍵を開け、部屋に入る。母は準夜勤務の日。あと数時間は帰らない。妹逹も明日が日曜のためか、まだ帰って来ていない。
電気とテレビをつける。
「お風呂は明日で。」
と独り言。着替えを済ませる。
ベッドに横たわり、メールを楽しんでいたその瞬間。
背後に気配を感じた。
ゾワゾワと全身の毛が逆立つ。見られている。
持っていた携帯電話が省エネモードに変わる。
黒くなった携帯画面は鏡の様に自分の顔を映していた。
黒い鏡の焦点を少しずつ少しずつ、気配のした背後ずらしていく。
自分の顔が半分になった時、同じ画面に2人の女。1人は私。
もう1人の女は首だけでクックックックックッと笑いながら
「逃げんなよ」
―長女が携帯をいじっている―
長女「私が気がついたのは、お母さんが帰ってきてからだったね。」
叔母様「部屋の前で倒れてたからビックリしたわよ。
今考えると、首は電車の外に浮いてたんじゃなくて、あんたの前に後頭部を向けて浮いていて、それが正面の窓に映ってたのかもしれないね。」
抹茶アイスを食べながら次女が話す。
次女「お姉ちゃんも大変だったねっ。私もあるよ、怖い話。」
怖い話投稿:ホラーテラー マヨさん
作者怖話