短編2
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出会い系の罰

 35歳の男です。僕が体験したちょっと不思議な話を。

 僕は当時、既婚者にもかかわらず、出会い系サイトにハマってました。妻に不満があったわけではありません。ただ若いときあまり遊ばず結婚したので、単純に「いろんな女性と付き合ってみたい」という願望があり、出会い系を利用していたのです。妻にばれなけばいいという考えであまり罪悪感はありませんでした。

 ある日、妻がちょっと熱っぽいということで、病院に連れて行きました。待合室で妻と順番を待っていたのですが、大きめの総合病院だったので待ち時間が長く退屈した僕は「ちょっとジュース飲んでくる」と言って2階の自販機コーナーに行きました。そこで缶コーヒーを飲みながら携帯でいつもの出会い系サイトを見て、メル友探しをしてたんです。

 しばらくして運よくひとりから返信がきました。内容は一言、

『結婚してるの?』

 僕はメールの内容に35歳と書いて送ってるので、その疑問は当然でしょう。でもあいさつも自己紹介も無しにいきなりそんな質問はないだろう、とちょっと腹が立ちました。しかしせっかく返事をくれた相手。グッとこらえて

『結婚してますよ。既婚だとダメですか?』

といったメールを送りました。するとしばらくして返信。

『奥さんの名前教えて』

 僕は???となりました。なぜ奥さんの名前を知りたがるのか?『なんで僕の奥さんの名前知りたいの?』

 僕はまたメールを送りました。するとまた、

『奥さんの名前教えて』

という同じ返信。既婚だなんて言わなきゃよかったな、と軽く後悔しながら、

『理由がないと教えられないよ。なんで知りたいの?』

と、努めて冷静に返信したのですが、またも返事は、

『奥さんの名前教えて』

 ……さすがに気持ち悪くなり、もう返信はしませんでした。

 するとまたメールの着信が。

『奥さんの名前教えて』

 僕はなんとなく怖くなって、そのアドレスを着信拒否に設定しました。そして待合室に帰ろうとエレベーターに向かいました。

 エレベーターに乗ろうとすると、先に女性が乗っていました。とりたてて特徴もなく普通というか地味なかんじの人です。軽く会釈してエレベーターに乗ろうとした時です。その人が僕に向かってボソリと言ったのです。

『奥さんの名前教えて』

 僕は恐怖と混乱でエレベーターを飛び出し、階段を駆け降り待合室まで走りました。妻は既に診察を終えて戻っており、ずっと帰って来なかったことをなじられましたが、僕はそれどころではありませんでした。

 いまだになぜあんなことが起きたのかわかりません。単に僕が女性の言葉を聞き違えたのでしょうか。それとも既婚でありながら出会い系などをやっていた僕に罰が下ったのでしょうか。あれ以来出会い系を見るのはやめました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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