中編3
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事故物件(一家心中)

明日私の家は一家心中する。やけに豪華な料理が並んでいるのを見てああ明日か…と悟った。

弟はトンカツだって無邪気に喜んでいる。

夜な夜な借金だらけのお母さんとお父さんが泣きながら話し合っているのを聞いていたが、決断するのに時間が随分かかったなぁと思う。

別に殺されるのは構わなかった。学校では虐められてるし、最後にトンカツ食べれて良かったなぁ。

「…っ」

何故か涙が出てきた。不味い。涙が止まらない…

このまま生きててもどうせ借金のカタとして私と弟は連れ去られていく。4人仲良くあの世に行った方が良い。わかってるけど…納得しているはずなのに涙が止まらない。

都内で電車はしょっちゅう止まる。自殺なんてこの国では当たり前だ。

「あ…ああああああ!!」

私がそうやって泣くとお父さんは黙ってビールの缶を空けた。

「分かったよ。お前だけ逃げなさい。さとるは連れていくからね」

戸惑っている弟を無視し私はトンカツを食べて、夜中家を出た。

翌日家に戻ると、みんな首を吊っていた。弟は無理矢理吊るされたに近い。しばらくぼんやりと3体ぶら下がっている死体を見つめていた。

「…」

何だか不思議だった。頬杖をつきながらお父さんの足を指でつつく。尿まみれで凄い臭い。

鉄臭い水道水を飲んでから、テーブルに座ると紙に過去の思い出を書いた。

お母さんとぎょうざを一緒に初めて作ったこと。

お父さんにマッサージ券をあげた事。

弟とウィンナーどっちがもう一本多く食べるか争った事。

ざっと書いてそれぞれポケットの中に手紙として入れてあげた。

何だか心が温かくなった。

冷蔵庫を開けるとお父さんお母さんが残したトンカツがあった。

ヤクザが怒鳴り込んでくるまで私はここで暮らす事にした。何故だかここから離れたくない。先が地獄だとしても今はあまり色々考えられない。

キャベツにマヨネーズをかけて、テレビを見ながらご飯。

家族達は凄い顔をしてる。でもやっぱり家族は家族だな…と考えてしまう。昨日泣いてばかりだったから今日ようやく落ち着いた食事が出来る。嬉しい。

3日目からはご飯がもうなくなってしまった。仕方ないから1日中家族の足を指でつついていた。寄ってくる蠅をぼんやり眺めてたまに奴らは私の顔にもくっついてくる。

5日後にはヤクザではなく、警察が私の家にやって来た。顔をしかめ、私に色々尋ねた後不気味そうな表情をした。

病院に入れられその後施設。ぼんやりと弟まで連れていく必要なかったんじゃないかなと思った。現に私は無事だ。でも寂しかったのかな。

大人になって私は結局あの家に戻った。もとから安い家賃があり得ない安さになっていた。

「ただいま」

ずっとこれから私はこの家に住むと思う。

死体と暮らした5日間の間に、お父さんお母さん弟それぞれ足の親指の爪を切っておいた。それをずっと肌身離さず取っていた。

畳に寝転び、私を取り囲むように爪をおいた。

何だかみんなで横になってるみたい…

「おやすみなさい」

怖い話投稿:ホラーテラー 家さん  

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