短編2
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お医者さま

そのお医者さまは、火傷して動けず包帯に巻かれてしゃべれない夫が臥している部屋の襖を閉めきって、中でいつも往診してくださいます。

しかし妻の私が部屋の外でお待ちしていると、いつも決まって夫の「うーうー」と痛そうに唸る声が聞こえるので、つい心配になって何度も「夫の具合はどうですか、大丈夫ですか」と、部屋の中にいらっしゃるお医者さまに尋ねてしまうんです。

お医者さまは私の声に決まって「はい、大丈夫です。」と仰ります。きっとまだ火傷がじりじりと痛むのです、とも仰ります。ああそうだろうなと私は了解して、正座しながらずっとお医者さまの治療が終わるのを部屋の外で待ちます。

しかし月日がたっても夫がなかなかよくならないので、私はなんだか妙に思って、お医者さまの邪魔になるのを覚悟でこっそりと治療中の夫の部屋を覗かせていただきました。

横たわる夫の顔を覗き込むようにしているお医者さまの背中が見えました。「うーうー」といつものように唸る夫の声がしましたので、私はまた「夫の具合はどうですか、大丈夫ですか」と聞きます。「はい、大丈夫です。きっとまた火傷がじりじりと痛むのでしょう。」変わらぬ答えが返ってきます。

そう言いながら、お医者さまは何かむしゃむしゃと口を動かしているようでした。なんだろうと思ってよくよく覗いていれば、ぺりぺりと何かをはがす音も聞こえます。

お医者さまが何をなさっているのか、もっとよく見ようと思って身を乗り出しましたら、私は少し物音をたててしまいました。弾かれたようにお医者さまがこちらを振り返りました。私はぎょっとしました、お医者さまの目はつり上がり鼻はつんと飛び出していて、まるで狐のようでした。はてこんなお顔だったかしらと思ううちに、お医者さまは部屋から突然逃げていってしまいました。

私が夫に駆け寄ると、夫の身体に巻かれた包帯が中途半端にほどけていまして、そこから見えた夫の皮膚のかさぶたが削ぎ落としたようになくなっておりました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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