中編4
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ある少女の話

とある学校で酷いいじめがあった。

発端はその学校で一大勢力を誇る女子グループの頂点に君臨する少女(仮にAとする)の想い人が、別の少女に告白したことだった。

告白された少女はすぐに交際を断ったのだが、Aにとって自分の好きな男子が他の少女に告白したと言う事が、耐え難いほどの屈辱だった。

何故なら、Aは今まで屈辱や挫折と言うものを味わった事がなかったのである。

Aの両親は、Aの望む物を全て与えられる力を持っていた。

そしてAの周りにはその力目当ての人達が集まってくるのは自然な事で、幼い頃からそのような環境に身をおくAには、生まれて初めて味わう屈辱に黙っていられる訳はない。

その日のうちにAはひと気のいない体育準備室に、告白した男子と告白された女子を呼び出した。

Aにとって少女はもちろん自分に靡かない男子にも制裁の対象だった。

まずはその男子をAの仲間たちが袋叩きにした。

その間少女に対してAは「お前のせいであいつは殴られているんだ」と言い続けた。

血を吐き倒れる男子に容赦ない追い討ちが襲い掛かる。

自分のした事でその男子が殴られていると信じ込んだ心優しい少女は止めてと叫んだ。

その叫びをAはニヤリと笑って聞き入れ、Aはその少女に対してこう言った。

「なら、アンタが代わりになれるの?」

少女はほんの僅かな間だけ唇を噛んで考えたが、Aの目から自分の目線を逸らす事なく頷いた。

Aは醜く顔を歪ませ、仲間たちにある事を指示した。

その後、体育準備室で何が起こったのかはその場にいたものしか判らない。

暫くして見回りをしていた用務員が発見したのは、瀕死の状態で倒れていた少女と男子の姿だった…。

翌日、少女は収容先の病院で、一度も目を覚ます事無く息を引き取った。

一緒に病院に運ばれた男子も、依然として意識不明の重体だった。

そんな事件が起こっても学校側は世間体を気にしてか、事故としてこの出来事をもみ消した。

Aもその仲間も、自分達の制裁ではなく事故で死んだという学校側の発表に胸を撫で下ろした。

反省する事無く日常生活を送るA達に、不可解な出来事が起こり始めたのは、少女が亡くなってからちょうど七日目の事だった。

最初の出来事は、Aのとり巻きであった女子が乗ったバスが横転事故を起こした。

酷い事故だったが、死者はとり巻きの女子数名で、運転手、その他の乗客には一切怪我が無かった。

次にAに従って暴行を働いた男子が、学校近くの川で水死体で発見された。

目立った外傷も無く、事故として処理された。

その出来事を皮切りに、あの時体育準備室にいた人間は、Aと今も意識不明の男子の二人以外、全て事故や病死と言う形でこの世を去った。

その頃のAは、この出来事は死んだ少女の呪いだと信じて疑わなかった。

家に引き篭もるようになり学校にも行かなくなったAを心配した両親の呼びかけにも、Aは一切応える事無く自室で恐怖に脅え続けていた。

ある夜Aは、自室の温度が急に下がった気がした。

かぶった布団をそっと捲ると、薄暗い部屋の中に何かが見えた。

目を凝らして凝視するAは、その何かを認識した瞬間、悲鳴を上げた。

部屋の中にいたのは、死んだ筈の少女だった。

あまりの恐怖で固まってしまったAに、少女はゆっくりと近付く。

「来ないで…来ないでよ!!!」

Aの懇願も虚しく、少女はAの顔スレスレまで近付くと無表情な目でじっとAを見つめ、ささやくように呟いた。

「アナタで…最後よ……」

少女のささやきに、Aは自分の周りで起きていた事が自分の思っていた通りだったと実感した。

「何よ…アンタが……風香が全部悪いんじゃない!!あたしをバカにしたからっ!!!」

風香と呼ばれた少女は無表情な顔のまま、そっとAの両頬に手を添えた。

その瞬間この世のものとは思えない感触を頬に感じたAは、声にならない叫びを上げた。

そんなAの表情に今まで無表情だった風香は満足の笑みを浮かべて、自身の体をAの体内に侵食し始めた。

ゆっくりと、しかし確実にAと風香は一体となっていった。

Aの悲鳴を聞きつけ、Aの部屋に入ったAの両親が

目にしたのは、ベットの上で穏やかな表情を浮かべたAだった。

次の日からAは引き篭もりを止め、再び学校に行くようになった。

それからというもの、Aは今までのAにあった傲慢な態度は無くなり、誰からも好かれる心優しい人間になっていた。

そして、意識が戻った男子のお見舞いに毎日足繁く病院に通うAの姿を見て、皆はこう噂するのだった。

『まるで死んだ風香みたいだね』

怖い話投稿:ホラーテラー ノクターンさん  

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