短編1
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深く暗い海の底から

海の奥深く、生物など全く存在しないほどの深くに、牢獄があった。

そこには、大罪を犯した人魚が捕らわれていた。

人魚が犯した大罪は、“人間を愛するべからず”。

人魚が愛したのは、全ての人間だった。人間の誰かではなく、全ての人間を愛していた。

それ故に罪は重く、日の光を見ることも、自由に泳ぎ回ることも、そして人間を見ることも、もう叶わないと決まっていた。

人魚は毎日涙したが、その涙も海に溶け、流れることは許されない。

そんな時、人魚の前に老婆が現れた。

老婆は言った。

「人間に会いたいかい?ならば歌うがいい。おまえの美しい歌声を海の外まで届けて、人間を連れてきてやろう」

その日から、人魚は毎日のように歌い、そのたびに老婆は人間を連れて現れた。

ある時は少年、ある時は赤ん坊、ある時は女性。

もう二度と目にすることは出来ないと思っていた人間たち。愛する人間たち。

人魚は喜び、今日も歌う。

愛する人間に会うために。

深く暗い海の底から。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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