中編4
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泣く子も黙る口コミ投稿

さーて、久々に旅行でもすっかね♪

てな時に大いに役立つ某宿泊予約サイトの口コミ情報。

実際にその施設を利用したユーザーの生の声だから、ホテル(旅館)を決める際、これ程参考になる情報は他に無いだろう。

全国から毎日寄せられる半端ではない数の〈口コミ投稿〉、当然の事ながら、情報としての役割を果たす前に審査を通過せねばならない。

誹謗中傷も度を過ぎればアウト!というわけだ。

では、審査に落ちた、いわば日の目を見なかった口コミは全て破棄されるのか、というと決してそうではない。

何年経ってもちゃんとある場所に保管されている。

例えば

「この旅館、うんち臭いから二度と利用しない!」

などというとんでもない投稿も、実は当たらずとも遠からずだった、という場合があるからだ。

そして

あるんだな・・・

数は少ないが

「幽霊が出た」

なんてのが。

何故俺がそんな事を知っているのかいずれ分かるからここでは言わない。

ここで話したいのは、将来有望と周りから期待されていたサイトスタッフ、兵頭君(仮名)についてなんだ。

入社したばかりの彼は、○○県○○市の、ある区域の担当を命ぜられた。

通常、仕事に慣れない新人は、先輩スタッフから仕事をそのまま引き継ぐ形で同じ区域をまかされる。

兵頭君も前任のSさんから仕事のイロハを学び、クライアントへの挨拶廻りも済ませ、いよいよ一人立ちだ、などと張り切っていたらしい。

二人で行動する最後の日、先輩Sは兵頭君を居酒屋に誘った。

ささやかな打ち上げである。

二人は県は違えど同じ○○地方の出身だった。

酔いが回り、ひたすら隠してきた訛りがぽつりぽつりと顔を出す。

ふと

上機嫌で話をしていたSが話を止めぽつりと呟いた。

「ペンション○○は、ほどほどにしといた方がいいぜ」

兵頭君、当然何の事だか分らない。

「え?○○に何かあるんですか?」

Sは逆に聞き返してきた。

「口コミ投稿あるだろ?」

「はあ?」

「あれ、どこで審査してるか知ってるか?」

「え?うちのスタッフがしてるんじゃないんですか?」

Sは少し考えて「誰にも言うなよ」と話し「審査してるのはうちじゃない。はっきりとは言えんが、都内のあるビルでやってる」と続けた。

「へ~そんなこと考えた事もなかったな」

「実はそこで働いている社員に俺の従姉がいてさあ。面白い情報が時々入るんだよな」

「面白い情報?」

「さっき話したペンション、出るって口コミが今年だけで3件あるんだわ」

「え~まじっすか?」

「しかも、しかもだ!」

「?」

「3件の内2件が、着物姿の女の子を見たってんだからただ事じゃないだろ?」

「まじ?それってやばくないすか?」

「大丈夫!俺が何ともなかったんだから!」

「あの、先輩が鈍いだけなんじゃ・・・」

「そうかも知れん。ただなあ、嫌な感じはするんだよなあ」

「びびらせないで下さいよ~!この先1年は担当するんすから」

Sは笑って言った。

「わりいわりい・・・脅かすつもりはなかったんだ・・・ただ」

「ただ、なんすか?」

「あのペンションの裏山、無縁仏っぽい墓石がちらほらあんだよ」

「またまた~(笑)」

Sは急に真面目な顔をして言った。

「気を付けるに越したことはない。あそこの主人がまた、ちょっと変わってるんだ」

「・・・・・」

尚、この話は先輩Sから直接聞いた話で、Sは俺の数少ない友人の一人なんだ。

「まあ、変わってるといや、奥さんもかなり変わってるけどな」

「へ~でも見た感じ二人とも普通に見えたけどな」

「ま、そのうち分かるわ。それにあそこに立ち寄る事なんか、もう殆どないやろ。最初から付き合った俺と違って」

「確かにそうっすね。へたすりゃ一度も寄らないですむかも」

サイトスタッフの仕事は主に、同社が出している旅行誌に、少しでも多くの施設を載せる事であった。

最小枠でも10万近くする掲載料を、6部屋しかないペンションが払う可能性など無いに等しいのだ。

だから契約を取る為にそのペンションを訪れる事など、まずあり得なかった。

「でも先輩、そんな、幽霊が出るようなとこ、放っておいていいんすか?全国にはあるんでしょ?他にもそんなとこが」

「うん・・・まあ、難しいわな。幽霊を理由に契約を打ち切るのは。できる事っていや、お祓いを勧める事くらいかな」

「ですよね。俺、あのペンションの主人にお祓い勧めてみますわ。だって知らずに泊まった人に悪いでしょ。うちの責任にもなりかねないし」

「まあな。サイト会員も馬鹿じゃない。お化けが出たなんて書いても採用されない事くらい分かってる筈だからな。そこを敢えて書くのは、多分サイト側に知って欲しいからだろ。何でこんなとこ紹介したんだ!ってな。出ないに越した事はない。でも、どうやって切り出すんだ?こっちからは言い出しにくいぞ」

「まあ、作戦はアパートに帰ってぼちぼち考えます」

二人が居酒屋を出た時は夜の9時を少しまわっていた。

その日は金曜日で土日は

二人とも休日。Sはその時、翌日のデートのことをぼんやりと考えていたらしい。

「じゃあ先輩!ご馳走様でした」

「ああ、月曜から頑張れよ」

タクシーに兵頭君が乗り込む。

その時

彼は運転手に聞こえないように小声でSに囁いたという。

「裏山の無縁仏、明日調べてみます。何か発見できるかも」

「馬鹿かお前!止めとけ!」

Sの大声は兵頭君に届いた筈だったのだが・・・

翌日の夕方、先輩Sの携帯に兵頭君からのメールが届いた。

この時初めて、Sは兵頭君が、異常なまでのオカルトマニアであることを知ったのだという。

続きます

怖い話投稿:ホラーテラー 蜥蜴のしっぽさん  

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