短編2
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ポトスの鉢植え

私の部屋にはポトスの鉢植えが、大中小と3つある。

土が乾いたら水をやる程度で特に手を入れたりはしていないが、風通しのよい場所に並べてあるので、よく育つ。

蔓が伸び、その部分が程よく繁るとカットして新しい鉢植えへ、と繰り返しているので、我が家には鉢植えポトスが計7つ。

その中で、どれだけ伸びてもカットしないポトスが1つある。

鉢から出た蔓は延々伸び続けているので、恐らく7〜8mはあるだろう。

邪魔にならぬよう、蔓をくるりと一塊にして置いてあるが、その塊すらもう直径1m以上だ。

不思議なのは、そのポトスの本体である鉢が片手で持てるほどの小サイズな事。

あの小さな鉢からよくまあここまで巨大な塊を形成したものだ。

ふと疑問に思い母に尋ねてみた。

「なぜこのポトスだけカットしないの?」

答えはこのようであった。

もとは数年前に亡くなった兄が育て始めたポトスだった。

死後に母が引き継いだが、大きすぎて置き場所に困ったため、幾つかに鉢を分けたそうだ。

ところがそれが俄かに枯れ始めた。

焦った母は土に肥料をやったり、置き場所を変えたりと色々試みたが、結局鉢植えはほぼ全滅。

辛うじて残っていたまだ青い部分をカットした母は、最後の頼みと一輪挿しに挿したそれを兄の遺影の前に置いたそうだ。

(あなたが育てたポトスが無くなりそうなの。どうしたらいい?)

そんな祈るような気持ちで。

結果ポトスはそこからスクスク育ち、3つの鉢に分割して今に至る。

カットしないのは、当時その鉢植えだけ成長が遅く、少しずつしか蔓が伸びない様が病弱だった兄の生まれ変わりのような気がして、そう思うとどうしても鋏を入れられないから、だそうだ。

なぜ急に枯れ始めたのか、また復活したのか理由は分からない。

ただ環境が激しく変化したり、親しい人が亡くなったりしたら落ち込むのは人間も、そして多分植物も同じなのではないかと思う。

兄の寝室の窓際に置かれていたポトスは、その最後の時を家族とともに見届けていたのだから。

部屋では昨日新たにカットしたポトスの蔓が一輪挿しで葉を揺らしている。

もう少しして根っこが伸びてきたら、鉢に植え替えてやる予定だ。

(兄の生まれ変わりから分割されたのなら、兄の子供か…?)

ふとそんなふうにも思う。

今日もポトス達は元気に育っている。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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