中編5
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Yowll Shard City (Infection2)

8/10 AM3:50

ヨウルシャード市総合体育館

バリケードの設置も完了し、町の住民達は総合体育館の競技フロアに集められた。ヨウルシャード市の人口は約3万2千。体育館には1万3千ほどの未発症者が集まった。つまり、残りの人間はみな症状を発症したことになる。

突如として集められた住民達は、軍や警察に説明を求めていた。

マーティン少佐が事情を住民達に説明。内容に多少脚色はあったが、おかげで皆落ち着いた。

夜遅かったこともあり、現在、住民達は夢の中だ。

総合体育館の外はマーティン少佐の部下達が警備についている。警察は館内の警備にあてがわれた。

建物屋上の見張りをあてがわれた数人の警官達。

その中に、バイルとレジダブの姿があった。

「なぁ、バイル。ヨウルシャードはこれからどうなっちまうのかな?」

「…町総てが感染者で埋め尽くされてる。ウイルスのワクチンもない。

救援は来ないかもな。」

「何言ってんだ?救援ならマーティン達が来てるだろ?」

「…!?そうだ、何であいつらは危険を承知でこんな所へやって来たんだ?」

「軍人魂が燃えたんじゃねーの?」

「いや、何か理由があるんだ。自分達の身を危険にさらしてでも、来なくてはならなかった理由が…」

バイルは、暗闇に浮かび上がる町並みを眺めながら言った。

そんなバイルをレジダブは怪訝な表情で見ていた。

8/10 AM4:15

総合体育館前 広場

マーティン少佐率いるチーム30の軍人達は手際よくバリケードを張り巡らせていた。バリケードとは言いつつも、実際は総合体育館内の人間の脱走を防ぐためだが…

「アルファ3からアルファ2。

第二バリケードの設置が完了。これより配置に付く。」

「アルファ2了解。市街地メイン通りの区画整理も整ったようだ。定刻通りにチーム22が到着する。」

「了解、引き続き、C130輸送機用滑走路の準備を進める。」

「了解、アルファ3。宜しく頼む。」

アルファ3の隊員約15名は、素早くハンビーと装甲車に乗り込み、広場を去った。

その様子を総合体育館屋上から見ていたバイルがレジダブに疑問を投げ掛ける。

「おい、レジダブ。

あの軍人達、何をあんなに慌てているんだ?」

「はあ?んな事どーでもいいだろ?別に俺達を取って食ったりはしないだろ。」

「…もうバリケードは完成した様子だ。だったら、警備に付けばいいものを…なぜ無人にしてる。」

同時刻

総合体育館内4F

元・管理事務所

現・作戦司令部

マーティン少佐とベン捜査官の2人は皆が去った後の閑散とした室内に居た。

「ベン、これからしっかり頼むぞ。」

「ああ、分かってる。

真実には知っていい事と知らなくていい事が有ることもな…」

「それなら安心だな。

こういう状況になると必ず真実を嗅ぎまわる輩が出てくる。聴衆にとってはヒーローだが、我々にしてみれば五月蝿いネズミだ。」

「あのフリーライターの女か?」

「…君はそう判断するか?私は特に指名はしないがな…。ネズミはチーズに食らい付いているのがお似合いだ。」

「あの女にとってのチーズは、この件の真実…」

「食らい付いていそうか?」

「いや。食らい付くどころか、まだキッチンにさえ入れていない。」

「ふっ…、だが、キッチンに侵入されては事だ。

そうなる前にネズミ取りを仕掛けるとしよう。」

「大丈夫だ。既に手筈は整っている…」

そう言って、ベン捜査官は1つの茶封筒を軽く叩いて見せた。

8/10 AM5:25

ヨウルシャード駅構内

プラットホーム

アン・パターソンは、手帳片手に人気の無い駅構内に居た。

他方からのヨウルシャード行きの列車は全て運休になったと昨夜のニュースは伝えていた…

(何!?何で列車がホームに!?)

柱の陰に身を屈めて、アンは列車の様子をうかがった。

列車は約10分前にひっそりとホームにやって来た。そしてそのままホームに停車したまま。何の動きもない。

昇り始める朝日が黒塗りの車体をオレンジ色に染めていく…

…と、列車の扉が一斉に開き、白い防護服に身を包んだ者達が次々と降りてきた。

「急げ!時間がないぞ!」

「PPSの用意を、すぐに中身を確認しろっ!」

「ベータ6は通路の確保に務めろ!イーターに気を付けろ!!」

(イーターって何?)

アンがそんな考えを巡らせていると、ベータ6の隊員達が通路確保の為にアンのいる方に向かってきた。

(…!?やばい!!)

アンは、近くにあったゴミ箱の陰に、急いで身を隠した。

その前を隊員達が足早に通り過ぎていく。

「ベータ6から、オールベータ。

プラットホーム、クリア。繰り返す、プラットホーム、クリア。」

(………っふぅ。)

「…!待て、何か様子が変だ…」

(え!?ウソ、気付かれた?)

アンがビクついていると、プラットホームの遠くの方から何かの叫び声が聞こえてきた。

隊員達が急に焦り出したのが、隠れているアンにも即座に認識できた。

「…正面!正面の階段から来るぞ!!」

「焦るな、一体ずつ倒していけば問題ない!」

「こちらベータ6、イーターに遭遇した。数は10体。真っ直ぐこちらに向かってくる!!」

「皆取り乱すな!構えろ、ギリギリまで引き付けて撃て!」

「……。今だ、撃て!!」

その声と同時に凄まじい銃声がプラットホームに響き渡った。

「う、うわっ!!駄目だ、抑えきれない…………っ、わ、わぁぁぁっ!!!!」

「エイノルズ!?エイノルズ!誰かエイノルズを助けろ!!」

「畜生っ!!こいつら、動きが速すぎて狙いが…」

「ウ、ウェイルズ大尉!

駄目です!数が多すぎます!!」

「焦るなっ!!落ち着いて狙え!………っぐわぁぁ!!」

「た、大尉!?ウェイルズ大尉!!」

「うあっ、く、来るな!

来るなっーー!!」

……ザシュッ。

辺りが一気に静かになる。アンはその静けさこそが、得体の知れない何かに軍隊が敗けた知らせだと分かっていた…

焼けた硝煙の臭いと、鉄の臭い。

血の海になったヨウルシャード駅のプラットホームにもう人影はない…

怖い話投稿:ホラーテラー ジョーイ・トリビアーニさん  

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