中編6
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Yowll Shard City(Team22)

隔離から丸一日が過ぎた。総合体育館に避難した者達の中にまだ発症者は出ていない。

…そして、何もないまま2日目の夜になった。

8/12 AM1:25

ヨウルシャード市総合体育館 前 広場

バリケードの守備に当たっていたアルファ3のエバンズ軍曹は、町の違和感に気付いた。

静かだ…。何も聞こえない。虫の声も、風の音も、…………。

…………ッ、ガシャッ!

静寂を切り裂いたのは、獲物を求めここまでやって来た2体のイーターが、停車していたハンビーの屋根に飛び降りた音だった。

「て、敵襲!敵襲だ!」

エバンズ軍曹の叫び声に周りの隊員達が武器を構える。

イーターはその動きに気付き、甲高い咆哮を上げた。

「おい!バイル、下に何か居るぞ!!」

屋上から下を覗き込むようにレジダブが言った。

「何だ…あいつらは…」

バイルとレジダブは、イーターについての説明を受ける会議の出席者リストに入っていなかった。

2人は突然現れた見慣れない生き物に驚いた。

地上ではチーム30の隊員達とイーターとの戦闘が繰り広げられていた。

「………っくそ、こいつら、ちょこまかと!!」

「中尉、RPGの使用許可を…」

「待て、ヒューイ。そんなもの周りを破壊するだけにしかならん、それより、全員に3人一組になるように指示をだせ!」

「了解です。」

ヒューイ軍曹はアンダーソン中尉の指示を味方に伝えるべく走った。

エバンズ軍曹はイーターと間近の距離で対峙していた。2体いたうちの片方がエバンズ軍曹に近付いてきたのだ。

イーターはエバンズ軍曹を威嚇するでも、攻撃するでもない。ただ、威圧的な空気を軍曹に送っていた。

身長2m強。がっしりとした肢体、絹のように白い肌。

イーターはまるで神のごときオーラを放っている…

「どけっ、エバンズ!!」

味方の隊員がイーターに向けて発砲した。

イーターは驚異的なジャンプで攻撃を回避。

再び咆哮をあげる。

今度は、さっきの様な甲高い咆哮ではなく、地獄の底から響くような低く重い咆哮を……

広場の前に広がる町並みが騒がしくなる。

イーターの大群。数は数百体。

さっきの雄叫びは仲間を呼ぶためのものだったのか。

エバンズ軍曹はそう思った。

事態は最悪になる。

最新鋭の重装備で武装した対バイオハザードチーム30は押し寄せるイーター相手に全く歯が立たないでいた。

「くそ、何だあの数は…」

「駄目だ!そっちに行くな!!」

「おい、後ろだっ!!」

「誰かっ!誰でもいいから装甲車で奴等を踏み潰せ!!」

「チクショウ!一体なんでこんな目に…」

屋上にいた警備の警官達は眼下で繰り広げられているイーターによる一方的な戦闘にすっかり恐怖していた。

だが、それは総合体育館の中に居る、この町の市民達も同じだった…

正面広場を守備していたチーム30は、戦闘開始から数分で瓦解し、イーターが体育館内に侵入を始めた。

「お、おいっ!!く、来る。化物がこの中に入ってくるぞ!!」

初老の男が発したこの言葉が、市民達の恐怖心を爆発させた。

「うわぁぁあ!!」

「逃げろっ!早くここから出ないと!!」

「待て、押すな!まだ子供が中に…」

「ママ、パパー!!」

「痛い!お願い、足をどけて!!踏まないで!!」

パニックに陥った市民達は皆裏の出口に押し寄せ、すでに事態の収集がつかなくなっていた…

侵入したイーター達は、手当たり次第に逃げ遅れた市民を喰らった。

体育館内のフロアが鮮血に染まる。

悲鳴は屋上にいたバイルとレジダブ、それに他の警官達にも届いていた。

「レジダブ、行くぞ!」

「何処へ!?」

「逃げ延びた市民を守る、あの化物と戦うんだ!」

「はぁ!?バイル、気は確かか!?お前だって見たろ?

あれだけ屈強な軍隊が数分で壊滅させられたんだぞ!?

そんな奴等相手に、どう戦うってんだ!?」

「やれるだけの事はやる。犠牲者の数を出来る限り減らすんだ。」

「……わかったよ。

非常口の前にレミントンが置いてある。気休めにしかならないが、あれを持っていこう。こんなハンドガンよりかは役にたちそうだしな…」

「ありがとう。お前はいい相棒だ、レジダブ。」

「よせよ、バカらしい。

………おい?他の皆は!?

どうする!?」

レジダブのこの呼び掛けに屋上の警備にあたっていた警官達が呼応した。

総勢十数名の警官隊が、レミントンショットガンを片手に屋上から階下へ繋がる非常階段を駆け降りていく…

8/11 PM9:20

ヨウルシャード・バスターミナル

アン・パターソンの右足には深い切り傷があった。

彼女は、駅から町中に戻って数時間後にイーターに遭遇。何とか逃げきったものの、深傷を負ってしまっていた。

放置されたバスの車内で、傷口の手当をするアン。

大事な取材ノートとお気に入りのペンは、泥に汚れていた。

アンは疲れきっていた。

彼女は、一度マーティン少佐の部隊が監視する総合体育館に戻る事を決意する。監視下に置かれるのは気に入らないが、丸腰でここを彷徨くのは危険すぎると判断したからだ。

……アンが総合体育館に着いた頃にはすっかり日付が変わっていた。

8/12 AM2:50

ヨウルシャード市総合体育館前 広場

「………何なの、これ。」

アンは愕然とした。

安全だと思って戻ってきた総合体育館は、電気も消え、廃墟と化していた…

血にまみれた銃器に車両、辺りにはまだ生暖かい血の匂いが立ち込めている。

アンは建物の屋内に入る。

凄まじい血の匂い、誰が誰かも分からない様な惨殺死体。

アンはこの場所のこの惨状をノートに書き留める。

【やっと安全な場所に戻れたと思ったのに、辺りは血の惨状だった…

皆、一体どうしたのだろうか?

どのエリアにも人は居なかった。

あれだけの数の軍隊や警官隊はどうしたのだろう?】

過る疑問を胸に、アンはさらに建物の奥へ進んだ。

8/12 AM7:00

ヨウルシャード市南150km地点。上空3000メートル

シティアーバン迷彩柄のC130輸送機がまだ微かに残る雨雲を切り分け飛んでいる…

対バイオハザードチーム22。ウイルス対策、及び戦闘のプロフェッショナルが揃った超精鋭部隊だ。

彼らはC130輸送機に備え付けられた簡易的な座席の上で、装備の手入れをしている。

「スカイタートルから先発隊、マーティン少佐へ、

繰り返す、先発隊マーティン少佐。居たら応答してください…

……駄目だな。

何度交信しても出やしない。」

「一体何があったんだ?」

「知らん、とりあえず着陸だ。さぁ、後ろのお客にシートベルトをするように言ってくれ。」

「了解…」

輸送機コックピットの機内放送ピンを手前に倒す。通信が内部に切り替わる。

『チーム22、間もなく当機はヨウルシャード市に到着する。着陸時の衝撃に備えてシートベルトを着用せよ。』

チーム22の隊員達は素早くシートベルトを装着した。

機体は下降を開始。

みるみる内にコックピット窓前方の雲は消えていき、ヨウルシャード市がその全景をのぞかせた。

「見えた。着陸地点確認、ETA」まで約5分。

「HQ、こちらスカイタートル。ヨウルシャード市上空に到着。着陸地点を視認、速度よし、侵入角よし、計器オールクリア。

着陸する。」

メインストリートに仮設された臨時滑走路に大きな影が迫った。次の瞬間ジェットエンジンの甲高い音と共に、チーム22を乗せたC130がヨウルシャードに到着した。

ヨウルシャードの町は静まり返った不気味な気配でチーム22を迎え入れた…

怖い話投稿:ホラーテラー ジョーイ・トリビアーニさん  

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