短編2
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琵琶湖

琵琶湖にはバス釣りの釣り人が多い。

都市伝説でも有名な話なのだが

バスがたくさん釣れる場所には

水死体が沈んでいることがよくあるようだ。

つまり

水死体を餌に、集まる魚が多いと言うこと。

そんな琵琶湖でのフィッシング中に起きた話。

わたしは夫に連れられて

夜中から朝方まで

バスフィッシングをする事が

楽しみの一つでもあった。

その夜もいつもと変わらず、夫とのフィッシングの最中

とても強いヒキを感じた。

今までにない強いヒキ。

かなり興奮気味に糸を手繰り寄せるが

あまりにも強いヒキ。

今にも竿が折れそうだった。

ゆっくりとその正体が水面に浮かんで来た。

黒くて、長い?

髪のようにも見える。

もしかしてナマズ?

ナマズならひげもあるし

髪の毛に見えた『それ』も納得いく。

とにかく、ゆっくりと慎重に手繰り寄せる。

その正体が段々とはっきりしてきた。

『えっ?これって服を着てる?』

・・・そうです。

わたしは女性の水死体を釣り上げようとしていました。

まだ

水中に女性の水死体が浮いている。

このまま警察に連絡をしようとした時

その女性はすぅ~っと

左手を岸に伸ばしてきました。

とても色白で・・・と言うよりも青く

ブヨブヨにふやけて見える皮膚でした。

ところどころ

肉が剥がれ落ち、骨までも見えていたように思います。

私も夫も金縛りにでもあったかのように

その場から動けずに、その女性の腕を見ていました。

だんだんと左手だけが伸び、岸に手が届きました。

ゆっくり、ゆっくり・・・

女性は岸に向かって動いています。

とうとう両手が岸に辿りついた時、

私たちは何故か動けるようになりました。

一目散にその場から逃げました。

国道(ほんの十数メートル)まで走ってきたことで、少し安心したのか

私と夫は後ろを振り返ってしまいました。

さっき私たちが居た場所には

全身ずぶ濡れだと思われる女性が俯いて立っていました。

ピチャ、ピチャ・・・

ふ~ら、ふ~ら・・・

大きく左右に動きながら

私たちの方へと歩いて来ました。

逃げようとするが、足がもつれてうまく走れません。

すると

派手にこけてしまい、膝からは血が滲み出ていました。

しゃがみ込んだ体制を元に戻したとき

その女性は私たちの目の前まで来ていました。

その顔は

本来目がある場所には眼球がなく、

頬は垂れ下がり、

唇には何かに噛まれたような跡がついていました。

その顔で女性は私たちに

にたっと笑いかけ

『引き上げてくれてありがとう』

そう言って、消えていきました。

この件以来、

琵琶湖でのフィッシングがトラウマになってしまった事は

言うまでもありません。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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