短編2
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無垢なる者

 

ママは僕を叱ってくれた。いつも僕がいい子になるように一生懸命に叱ってくれた。僕は今でもそれを信じている。

 

自宅:風呂場

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…ママ」

 

僕は泣いている。    いつものお風呂場で砂の付いたシャツを脱ぐようにいわれた後にママに背中や腕をつねられ、とても痛かったから。

 

「全部坊やの為だからね…坊やをいい子にする為にやるんだから…」

 

(いたい…ママ…) 

今日のきっかけはなんだったか…頭がぼんやりして思い出せなくなってきた。  

(そうだ…お洋服を…あそんでて…)

 

「お洋服は汚したらだめよ…何度も言ったのに…悪い子は心が汚れてるの…ママが綺麗に洗ってあげるからね」

 

ママは僕の髪を強く掴んで顔を上にあげさせて、シャワーを僕の胸に向けた。

 

「マ…マ…僕…いい子に…」 

震えて上手にしゃべれないせいか、ママはシャワーの水を僕にかけ始めた。

冷たかった水はだんだん暖かくなって、熱くなって、痛くなった。

 

「…ママっ…ごめんなさいっ僕いい子になるから!…ごめんなさいっ…ごめんなさいっ!」 

髪を掴まれている性で動けない。シャワーが当たる胸は赤くなって身体が痛い。

ぼくは浅い呼吸をしながら必死に『ごめんなさい』を繰り返していた。

痛い…痛い…痛い…

 

(ママ…ごめんなさい…ママのためにいい子になるから…がんばるから…ゆるして…ゆるして…)

 

もう叫び声も泣き声もでなくて力一杯に開いた目でママを見る。

きっと怒った顔をしてるんだ。ぼくは悪い子なんだから…

 

ママは…

 

ママは、すごくすごく楽しそうに笑ってた…    まるで人形遊びをしてる女の子みたいに…

 

「あ…ああ…ああ!」

 

(ママっどうして笑うの?怒ってよ僕のためでしょ?僕が悪い子だからでしょ?ねぇ僕はなに?僕をみてっお願いママ…)

 

誰かの叫ぶ声が聞こえて、僕の目の前は真っ白くなった。 

 

お風呂場は湯気でいっぱいでとても白くて、床に落ちたシャワーが足元を濡らしていた。

横にはママが倒れていた。

頭からは赤い水が流れて洋服を汚してる。

 

どうして倒れてるの?

僕が押したからかな?

 

「ママ…起きて…ママ?」

 

いいや…なんだか僕も眠くなっちゃった…

一緒に寝ようね…ママ…

 

僕は動かないママを抱きしめ、腕を自分の背中に置くとなんだかものすごく安心した。

怖い話投稿:ホラーテラー 久遠さん  

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