短編2
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歩道橋

私が中学2年だったとき、

バスケ部に所属していたのでいつも帰りは8時過ぎだった。うちの学校ではバスケ部は「厳しい」で有名だがそれなりの成績も残している。

私はいつものようにKちゃんと2人で帰った。Kちゃんとは幼稚園から一緒の親友だ。

そして歩道橋を渡っていると、ドーンと一発の花火が打ち上がる音に私たちは釘付けになった。

「この時期に花火なんてやってるんだー」

「花火祭りなんてあった?」

そう言って私たちが話していると、前から女の人が1人歩いてきた。その人はピンクの浴衣を着ていたが、髪は結ばずに前髪にかかっていた。

「この近くでやってるなら、うちらも行こうよ」

Kちゃんはそう言うと、曖昧にうなずいた私の手を引いて女の人に近づいた。

ちょっと不気味な人だったので、正直話しかけるのには抵抗があった。

「すみません、この近くで花火祭りあるんですか?」

「……」

何も答えない女。

私はKちゃんの手を引いて歩道橋から降りた。

青ざめた私の顔を見て、Kちゃんは言う。

「どうしたの?大丈夫?」

「ねぇ花火はいいから帰ろ」

「でもうちら部活部活で、夏祭りとかいってないんだよ?いきたいと思わない?」

「じ、じゃあ違う人に聞くとかさ…」

私の発言はKちゃんからしたら意味不明だったらしく、その後は何の会話もなく帰った。

翌日。部活の友達と話をしていたKちゃんが私に言った。

「昨日、花火祭りなんてなかったらしいよ。でも……」

切羽つまったその表情を見て、なんとなく予想はついた。

「……今年の夏にあの歩道橋で、20代ぐらいの女の人が自殺してんだって」

その日の練習はまったく集中できなかった。部活が終わり、またKちゃんと帰った。

歩道橋の前にくると私たちは顔を見合せて2人で手をつないで歩道橋へ向かった。

一段一段、のぼるのがやっとで震えは止まらなかった。

「そういえばさ、昨日のドラマ見た?」

Kちゃんがいきなり話を始めた。それは私にとてつもない安心を与えた。

私は返事を返して、いつものように雑談をしながら歩いた。

そして歩道橋を渡りきった。

ふーと息を吐き、私たちは自然と笑っていた。いつも渡ってるへんてつもない歩道橋が、こんなにも怖く思えることが不思議だ。

気づけば私たちがつないでいた手は外れていた。

そして私1人、後ろを振り替えると、歩道橋に浴衣を着た昨日の女の人が立っていた。

私は彼女に手を振ると、Kちゃんと帰った。

あの人がちゃんと天国に帰ったかはわからない。でも、翌日からあの歩道橋を通ることへの恐怖はなくなった。

危害を受けたわけじゃないので、悪い霊ではなかったと思う。

怖い話投稿:ホラーテラー れもんさん  

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