中編5
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救済

俺が中学生の頃に体験したあり得ない話。

小さい頃の俺はとんでもないビビリで、怖い映像はおろか、話すらも聞いたら最後、一週間は夜中に魘され続けるほどセンシティヴだったw

それでいてそういう類の話を好んで求めるのだから、ホントどうしようもない。

想像力だけは異常に発達していて、話を聞くとあれこれ自分勝手に想像して勝手に恐れ戦いていたw

ある日、友達と怖い話を披露し合っていると、その内の一人が馬鹿怖い話を投下しやがった。もともと語りが上手いやつだったが、内容そのものがそれ以上にヤバかった。こんな感じ

「A(同じクラスでいじめられていた女の子)いるだろ。あいつ悪魔に憑かれてるんだぜ。

というのも、先月転校したB先輩いるだろ、あの先輩が一昨日自殺したらしいんだよ。で、そもそも転校した理由はなんだったのかって話なんだが、B先輩の同級生のやつらに聞いてみたんだ。そしたら、すげぇことが判明した。

当時Aの噂は先輩達も知っていたから、そのB先輩と他三人で見に行ったらしいんだ。

放課後の教室で、Aだけがポツンと座ってたらしい。で、なんか書いてるのよ。真っ黒なノートに。それがB先輩の興味を掻き立てたんだろうな、それを取り上げにいった。仲間は必死で止めたらしい。

なんでって、異常だったんだよ。前後、左右に凄い勢いで体を揺らしながら書いてるのよ、なにかを。

その異様な雰囲気に恐怖を感じた三人は、全力でB先輩を止めにかかる。でも先輩はなにかに取り憑かれたようにぐいぐい進んでく。

で、ついにノートをひっつかんでその内容を暴いた。何だったと思う?

十字架だよ。ノートが真っ黒になるほどの大量の十字架が、ノートを突き破るほどの筆圧で刻みつけられていた。

Aは発狂して、自分の頭を狂ったように掻き毟っていたそうだ。そんで、なんとB先輩は、そのノートを見るなり、何か熱いものを触ったかのように、悲鳴をあげて窓の外に投げ飛ばしたそうだ。実際手のひらが黒くなってたらしい。

で、その間もAはますます激しく頭を左右に振りながら掻き毟る。B先輩がAに向けて罵声を浴びせた瞬間、ピタリとAの動きが止まる。

この時点で他の三人は半泣きだったそうだ。廊下に避難していたらしい。

そしたら、Aがすっと立ち上がってこっちを向いた。そりゃ凄い形相だったようだ。今でも夢に出てくるらしい。異様に目を見開いていて、眼球は真っ黒になってる。自分達全員が同時に睨みつけられている感じだったらしい。そんで、含み嗤いしてるんだ。

その瞬間三人の内の一人がその場にしゃがみこんで失禁、もう一人は逃げだした。

で、この話を俺にしてくれた先輩は成り行きを見守ったらしい。

そしたらAはすげぇ低い男の声でわけのわからないことを呟き始めた。直後B先輩が激しく痙攣し始めたらしい。そんで、AがB先輩に歩み寄ってくる。で、耳元で何かを呟いて、てゆうかそう見えたらしい、で、突き飛ばした。吹っ飛んだ。凄まじい力だったらしい。

なんでって、普通押されたらその場で倒れるだろ?B先輩、教室の端まで吹っ飛んだんだと。で、今度はこっちに顔を向けて、地鳴りのような声で絶叫したらしい。そこで先輩失神。

気づいたら病院だったとさ。その後、B先輩は虚ろな表情で独り言を言うことが多くなり、ついに不登校に。で、転校。現在に至る。」

みんな絶叫して怖がってた。なかには興奮している奴もいた。でも、俺は、その場にいる誰よりも恐怖していた。

廊下に、Aがいたからだ。こっちを無表情に見ている。で、どっか行った。何故か他の誰もそのことに気づいていなかった。俺は震えていた。でそのまま帰宅。恐怖の夜が始まる。

いつものように俺は勝手に話を膨らませて恐怖していた。

その時考えてたのは、十字架は悪魔を追い払うものだから、それを失ったAは今や悪魔に乗っ取られているのではないか、というもので、恐怖が倍増した。俺は悪魔とともに授業を受けているんだって。身近な話だから、他人事と思って片づけることができない。

ベッドの中で悶々としていると、異常な汗が出始める。暑い。で、布団から這い出ると、今度は寒くなる。そのうち意識が混濁してきて、息がうまくできなくなる。過呼吸みたいになる。いくら息を吸っても吸ってる気がしない。気づいたら、水の中にいた。どす黒い濁った水だ。で、すぐに無くなる。そしたら、学校の前にいた。白黒で、味気の無い不気味な世界だった。空は真っ黒なのに、視界は開けていた。何も音が無い。俺は息をしてるんだろうか。

俺は何かに引っ張られるように校庭を進んでいく。すると、前方になにかある。ノートだ。ぞっとした。全身を悪寒が駆け巡る。でも、そんな体の反応とは裏腹に、俺はそのノートを拾い、学校に入っていく。階段を上り、自分の教室の前に来た。火の玉みたいなのが椅子の上に浮かんでずらっと並んでいた。教卓の上にもひとつ。その中に、Aがいた。立ち上がった。こっちに来た。速い。俺は心の中で悲鳴をあげる。後ずさろうとしてもできない。ついに目の前まで来た。Aは、俺の眼を覗きこんでいる。それは、どちらかといえば、清廉だった。

で、突然俺の手を掴み、駆け出した。凄い力だった。階段を駆け下り、校庭に出る。すると、真後ろにある校舎が、一瞬で廃墟になった。そんで、凄まじい絶叫と足音が追っかけてきた。何千、何万もの「なにか」が狂ったように追いかけてくる。

振り返ってはいけない、とAが俺に優しく言う。その通りにする。で、気づいたら水の中。で、布団の中。汗なのかどうか、なにかの液体で布団はビショビショ。で、息をきらしてぜぇぜぇしてた。朝を迎えていた。

次の日、放課後の学校で、信じられない出来事が起こった。

偶然なのか、Aと俺だけが残った。気味が悪くなり(昨夜のこともあったので)逃げ出そうと席を立つと、Aも凄い勢いで立ちあがってこっちに走ってきた。俺は小さく悲鳴をあげたが、そんなの気にも留めずAは俺の右手を両手で握ってぼろぼろ涙を流しながらこう言ったんだよ。

「ありがとう…私をあそこから連れ出してくれて…」

それから俺とAは唯一無二の親友となった。

怖くないけど信じられんでしょ?

怖い話投稿:ホラーテラー 104001さん  

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