短編2
  • 表示切替
  • 使い方

鉄柵

隙間。

暗闇だとなぜか気になる。

恐怖とは経験、知識、常識を元につくられる。

こんな時間に誰もいないだろう。

こんな所に人はいないだろう。

目を瞑り想像する。

いたらどうしよう。

いたらどうしよう。

タバコを吸いにベランダにでる。

家の中は禁煙。

かみさんが嫌がるから。

釣り用の小さな椅子に腰掛けタバコをふかす。

ベランダの鉄柵の隙間からは公園が見える。

公園の奥には駐車場をはさんで集合団地が見える。

昼間は子供が集う。

それぞれがブランコ、滑り台、砂場で遊んでいる。

17時をすぎると誰もいなくなる。

暗闇の中、集合団地の窓と街灯が薄明かりを放っている。

いつものようにタバコを吸いにベランダにでる。

23時。

肌寒い3月の終わり。

いつものの椅子に腰掛ける。

「カツカツカツ…」

足音。

見ると左端から駐車場脇の歩道を歩いてくる人影がいる。

「今仕事帰りかぁ…大変だなぁ。」

などと思いながら鉄柵の隙間から覗いていた。

黒いロングコートに赤いマフラー。

街灯の下を通る毎に格好がわかる。

女は左から右へと移動する。

鉄柵と重なる度に消え、また現れる。

丁度女の位置が中央から右側になる位、 鉄柵と重なり消えた時だ。

「キィィーン…」

耳鳴りがした。

嫌な想像が頭を過る。

鉄柵と重なっていた女が現れ、また消える。

「コンコン…」

ベランダの入り口を叩く音。

後ろを向けない。

今日はかみさんは泊まりで遊びだ。

いるはずがない。

「カツカツカツ…」

足音がこだまする。

「コンコンコンコン…」

入り口を叩く音。

音の位置から子供の背丈。

「夜中」で話をした襖。

実は最近取りかえてみた。

かえた日からあらわれなくなったが、夢は見続けている。

目が虚ろな女の子。

寝室をでてリビングの椅子に腰かけている。

俺とかみさんは食事をしている。

子供と一緒に。

俺が風呂に入るとき、

かみさんがテレビをみているとき、顔を洗うとき

そばにいる。

今もうしろに。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ