隙間。
暗闇だとなぜか気になる。
恐怖とは経験、知識、常識を元につくられる。
こんな時間に誰もいないだろう。
こんな所に人はいないだろう。
目を瞑り想像する。
いたらどうしよう。
いたらどうしよう。
タバコを吸いにベランダにでる。
家の中は禁煙。
かみさんが嫌がるから。
釣り用の小さな椅子に腰掛けタバコをふかす。
ベランダの鉄柵の隙間からは公園が見える。
公園の奥には駐車場をはさんで集合団地が見える。
昼間は子供が集う。
それぞれがブランコ、滑り台、砂場で遊んでいる。
17時をすぎると誰もいなくなる。
暗闇の中、集合団地の窓と街灯が薄明かりを放っている。
いつものようにタバコを吸いにベランダにでる。
23時。
肌寒い3月の終わり。
いつものの椅子に腰掛ける。
「カツカツカツ…」
足音。
見ると左端から駐車場脇の歩道を歩いてくる人影がいる。
「今仕事帰りかぁ…大変だなぁ。」
などと思いながら鉄柵の隙間から覗いていた。
黒いロングコートに赤いマフラー。
街灯の下を通る毎に格好がわかる。
女は左から右へと移動する。
鉄柵と重なる度に消え、また現れる。
丁度女の位置が中央から右側になる位、 鉄柵と重なり消えた時だ。
「キィィーン…」
耳鳴りがした。
嫌な想像が頭を過る。
鉄柵と重なっていた女が現れ、また消える。
「コンコン…」
ベランダの入り口を叩く音。
後ろを向けない。
今日はかみさんは泊まりで遊びだ。
いるはずがない。
「カツカツカツ…」
足音がこだまする。
「コンコンコンコン…」
入り口を叩く音。
音の位置から子供の背丈。
「夜中」で話をした襖。
実は最近取りかえてみた。
かえた日からあらわれなくなったが、夢は見続けている。
目が虚ろな女の子。
寝室をでてリビングの椅子に腰かけている。
俺とかみさんは食事をしている。
子供と一緒に。
俺が風呂に入るとき、
かみさんがテレビをみているとき、顔を洗うとき
そばにいる。
今もうしろに。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話