《忌》の家【花壇の場所】

中編5
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《忌》の家【花壇の場所】

新たに越して来た家族。

ご近所への挨拶は丁寧過ぎるくらい、一生懸命にしていた。

人当たりも良く、会う人々に挨拶は欠かさなかった。

しかし、日が経つにつれて家族構成が明るみになると、街の者は驚きを隠せなかった…。 

何故かと言うと…夫婦に娘、それに学年の関係で(中学三年生)で学校を変えたくなく、親戚の家から通うもう一人の娘がいた。

数年前に事件があった家主とまったく同じ家族構成…。

人々はなんにも起こらない事を願うばかりであった…。

街にも慣れ始め、家の中も整理された頃、家族は庭にある大きな花壇に花を植える事にした。

種や球根を買って来て、春の昼下がりに家族仲良く花壇造りに励んでいた。

土を馴らしながら掘っていた時、何かに当たった。

ガチッ

少し掘り出すとコンクリートの塊が出てきた。

父親が大きなスコップを持って来て、花壇全体を掘り始めると花壇の底はコンクリートで硬められていた。

そのうえ、真ん中は大きく抉られており虫歯のようだった…。

『なんなんだ…。これ』

その日はそのままにして、作業を止めた。

その夜…娘は喉の渇きを覚え、一階で水を飲みに行った。自分の部屋に戻り、窓から花壇を見下ろすと、花壇の周辺が霧掛かっていた。

目を凝らして見るとそこに誰かがいる…、ジッと見てみると女の子がいる。

娘よりも(小学六年生)少し下に見えた。

『こんな時間に誰だろう…何のようかな?』

そう思うと、その女の子はいきなりこちらを見た。

目が合い瞬きをしている間に女の子は消えていた。

不思議に思い、花壇まで行くと…、

誰もいない…。

『やっぱり…見間違いか…。』

そう思って部屋に戻ろうとした瞬間…手を握る感触がした。

ゆっくり握られた手を見ると、さっきの女の子がニコニコしながら、そこにいた。

そして…その女の子はこう言った。

『パパがね…殺すって、ママがね…許さないって。』

そう言い終わると気味の悪い笑みを浮かべ、ギュッと握った手を強めた。

『痛いっ』

そこで目が覚めた…。

『夢…かぁ…。』

手の痛みに気が付き、見てみると、握られた跡があった…。

それから数日、娘はまったく同じ夢を見続けた。

娘は元気も食欲も無くしたいた。変わり行く娘を心配した母親は病院に連れて行った。

だが、状況は変わらない…。

そのうちに、母親にもおかしな現象が感じ始めていたのだ。

お風呂に入り、座って髪を洗っていた時、ふと自分の足元を見ると横に子供の足が見えた。

娘が入って来たのかと思い、

『湯船に浸かってて…。』

と、言い振り替えると誰もいない…。トイレに入っている時にドアを強く叩いていたので、

『入っているでしょ』

と、ドアを開けると誰もいない。

不思議な事が度々、起こっていた。

娘が学校から帰って来てから部屋に閉じこもっていたある日、夕飯の支度が出来たので娘の部屋に入った。

すると、娘はベッドに仰向けになって寝転がっていた。

『ご飯が出来たから食べなさい…。』

声をかけて近寄った母親は娘の異変に気が付いた。

目の焦点は定まっておらず、天井を見つめながら何かを言っている。

母親が娘の肩を掴んだ時、娘の腕の先を見て戦略が走った…。

娘の手を握る…小さな手がベッドと壁の間から見えたのだ。

恐る恐る、体制をずらしながら見るとそこには、低学年くらいの女の子がいた。

あり得ない隙間から娘の手を握り、ニコニコしていた。

しかし、その顔はこの世のものでは無いと判るくらい、笑いながらも恐ろしい顔をしていた。

その時、娘がキャッキャッと笑い出して、こう言った…、『パパがね…殺すって、ママがね…許さないって』

娘は精神科の病院に入ったらしく、それからは娘の姿を見る者はいなかったらしい…。

それからその家族は半年も居ないうちに、街から出て行ったそうだ…。

再び…《売家》の看板が出た。

不動産屋の新入社員がこの屋敷の担当になり、訪れた時、ドアに貼り紙があった。

それは、《忌》と白地に黒で書かれた一枚の貼り紙だった…。

『…ったく誰だよ、こんなイタズラすんの…。』 

新入社員は後から来る先輩社員を待つ為にドアを開けて、先に掃除をし始めた。

玄関・廊下・階段…そして二階に上がり部屋の窓を開けた。

窓を開け、庭を見下ろすと花壇が見えた…。

『花壇…造る途中だったのかなぁ?掘り起こしたまんまだ…。』

そんな事を考えていたら、階段を上がる足音が聞こえた。

先輩社員が来た!と思い、振り返ると誰も上がって来なかった…。

不思議に思いながらも気のせいかと違う部屋に移動する。

二階全ての部屋の窓を開けて、一階に下りる時に誰かがいる気配を感じた…。

(やっぱり先輩…来ていたんじゃん)

一階に下りて、音のする方に向かうと真っ暗だった。

『先輩来てんなら雨戸と窓開けて空気の入れ換えくらいしてくださいよ』

誰もいなかった。

ゴトッ…。

その部屋にある押し入れから音がした…。

『いい加減にしてくださいな』

押し入れを開けても何にもなかった。

すると、後ろから声がした…。

『何を一人で遊んでんだ。とっとと終わらせんぞこんな不気味な家…。』

新入社員はそれとなく、先輩社員にいろいろと質問をした。

先輩は不敏に思ったのか、全ての事を話した。

花壇については…。

『あの花壇な、元々は池だったのよ…。さっき話した通り、母親と娘が埋められていた場所だ。

そのままにしたんじゃ縁起も悪いし、気味も悪い。

そんなもんだから、業者をたのでレンガで縁取った綺麗な花壇にしたって訳…。もしかしたら前の家族、花壇を掘り起こした後に何かあったのかもな…。』

『この花壇を見た時、あまりにも大きいし、ひょうたんのような形してるからおかしいと思っていたんですよ…。

話は変わりますが、先輩さっき二階に来ませんでした?』

『いいや…お前に声掛けた時、初めて屋敷に入って来たんだよ…。

なんで…?』

つづく

怖い話投稿:ホラーテラー 珠唸童子さん  

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